【歌の手帳】吉原の太鼓

吉原の太鼓聞こえて更くる夜(よ)をひとり俳句を分類すわれは(正岡子規

歌意「夜も更けると、吉原の遊郭で打つ太鼓の音が、この根岸にある我が庵まで聞こえてくるようだなあ。そんな賑やかな花柳界とは全く関わりなく、一人で俳句の分類をしているよ。この病床の私は」。

明治31年(1898)の作。正岡子規(1867~1902)は、この4年後に病没します。

この一首について、多くの解説書は「吉原の太鼓の音が、根岸まで聞こえている」と説明していますが、これは物理的に絶対聞こえません。吉原の夜の始まりを告げる「見世清掻き(みせすががき)」は、百挺を超える三味線であり、大太鼓ではないのです。

やはり子規の耳は、実音ではなく「心音」の太鼓を聞いているのでしょう。

(聡)

 

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