【歌の手帳】いでそよ人を

有間山(ありまやま)猪名(ゐな)の笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする(後拾遺集

歌意「有間山ちかくの猪名の笹原に風が吹くと、そよそよと音がします。その笹の葉音ではないけれど、そよ(それですよ)お忘れになっているのは貴方であって、私は貴方を忘れてなどおりませんわ」。

大弐三位(だいにのさんみ)の歌。夫である高階成章の官名から、こう呼ばれていますが、本名は藤原賢子(かたいこ、けんし)で、その母は紫式部です。母といい名前といい、「賢さ」を凝縮したような才女だったことが、この歌からも伺えます。

詞書を見ると、相手の男が寄せた「貴女の、私への心が疑わしい」という歌への返歌であることが分かります。

確かに「うますぎる歌」としか言いようがありません。

(聡)

 

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