ハーバード大学で「史上最長」といわれる研究では、長寿の秘訣は良好な人間関係であることがわかりました( ペイレスイメージズ1 / PIXTA)

80年にわたるハーバード大学の研究で、長寿の秘訣は「良好な人間関係」と判明

誰もが90代まで病気知らずの健康な生活を送りたいと思っており、それぞれの健康法を行っています。毎日運動して体重を維持したり、健康的な食事をしてコレステロールに気をつけたり、早寝早起きしたり、禁煙や禁酒をしたり、生活の質を高めるなど様々です。 

これらにはすべて真実がありますが、「史上最長」とされるハーバード大学研究で、長寿の鍵となる理由が意外なところにあることがわかりました。 

第2次世界大戦の95歳の退役軍人の話 

2020年1月、95歳の第2次世界大戦の退役軍人であるルイス・サン・ミゲルさんは、マサチューセッツ州のブレインツリーにあるスーパーマーケット「Stop & Shop」で、地元と州で軍人賞を受賞しました。彼は95歳になっても、週に16時間、スーパーで働いています。 

ミゲルさんは、いつも笑顔で、頭の回転も速い人物です。地元メディアの報道によると、彼はボストン銀行の副社長補佐で、74歳で退職し、69年間連れ添った妻(91歳)と暮らしており、1998年からスーパーのレジ打ちで働いています。 

ミゲルさんは、「私がこの仕事をしているのは、人と接するのが本当に好きだからです。私はいつも喜びを感じています 」と語りました。 

ハーバード大学80年にわたる研究 

このミゲルさんの話は、ハーバード大学長寿研究の結果をよく表しています。 

80年近くにわたる人間の発達に関する研究の中で、研究者たちは、人間関係と、その中でどれだけ幸せかが、健康に強い影響を与えることを発見しました。 

研究者たちは、1938年にハーバード大学2年生の男性268名(ジョン・F・ケネディ大統領を含む)の健康状態の追跡調査を開始し、その後、ボストンの都市部に住む456名の男性を調査対象としました。 現在までに約60名の方が存命しており、その中には90歳以上の者も多くおり、調査が進むにつれ、これらの男性の妻や、何千人もの子孫も含まれるようになりました。 

研究者たちは80年近くにわたり、参加者たちの健康の軌跡や、キャリアや結婚での成功や失敗などの人生を観察してきました。調査は、医療記録、対面インタビュー、アンケートなどの形式で行われています。 

その結果、お金や名声ではなく、親密な人間関係こそが真に喜びを与え、脳や体の機能の低下を遅らせることがわかりました。さらに人間関係の良し悪しは、どうやら社会的地位やIQ、あるいは遺伝子などよりも、長寿や幸福な人生を送れるか予測するのに適していることが判明しました。 

「50代の彼らについてできる限りの情報を集めた結果、老後の生活での健康を予測するのは、中年期のコレステロール値ではなく、人間関係の満足度であることがわかりました。50歳の時点で人間関係に最も満足している人は、80歳の時点で最も健康な人です」と、ウォルディンガー氏はTEDのトーク「What Makes a Good Life? Lessons from the Longest Study on Happiness」で語っています。 

また、ウォルディンガー氏は、満足のいく人間関係とは、友人や家族の数ではなく、人間関係の優しさ、温かさ、強さであると述べています。 

「このような良好な人間関係は、必ずしも完全に円滑なものではありません。80代、90代の夫婦の中には、毎日口喧嘩をしている人もいるかもしれません。しかし、困ったときに本当に頼りになると感じていれば、その争いは彼らの記憶の中では何でもないことなのです」とウォルディンガー氏は言います。 
 

幸せな結婚生活は脳の健康に良い 

ウォルディンガー氏が主導した研究では、特に夫婦関係に注目しました。もちろん結婚相手は、人間関係の中でも最も親密なものであり、心身の健康に大きな影響を与えるものであることは言うまでもありません。 

2011年に学術誌「Psychology and Ageing」に掲載された論文では、80代の高齢者の中には、幸せな結婚生活を送っていると、体調を崩しても気分が悪くならないと研究者に語った人がいる一方で、不幸な結婚生活を送っている高齢者の中には、精神的にも肉体的にも苦痛に耐えなければならない人もいました。 

同紙によると、男女ともに、結婚生活に満足している人ほど、体の不調を嫌だと感じることが少ないといいます。しかし、この楽観主義は、パートナーが日常的に一緒に過ごす時間の長さとは、あまり関係がないようです。つまり、結婚生活における幸せとは、必ずしも一緒にいる時間の長さではなく、誠意や尊重を持っているかどうかなのです。 

2016年に発表された別の論文では、研究者たちは、夫とよく喧嘩する人よりも、大切な人との間に安心感を感じている高齢の女性の方が、その後の人生で憂鬱な気分になることが少なく、記憶力も良いことを発見しました。 
 

「人」との時間を大切にすること 

ウォルディンガー氏は、80年にわたる研究の4代目プロジェクト・ディレクターとして、「温かい人間関係を保つ人は、より長く、より幸せな人生を送る傾向がある」と結論づけました。 

また、「孤独は、喫煙や飲酒と同じくらい致命的なものです」 とも言っていました。 

一方、ウォルディンガー氏自身も、研究の恩恵を受けています。今では毎日瞑想をして心と体を整え、その上で人間関係に時間とエネルギーを割くようになったとのことです。 


(翻訳・志水慧美)