童話の世界を描く挿絵画家:アーサー・ラッカム(中)

挿絵の力

研究を通じて、物語の中の挿絵が子どもたちの読む力と意欲を高めることが分かりました。子どもたちが徐々に単語を覚え、意味を理解できるようになった時、物語の内容を知ることができます。そして、挿絵は読書を愉快で面白いものに変えてくれるのです。

優秀な挿絵画家が備えなければならないスキルとして、人間の異なる段階、赤ちゃん、幼児、児童、青年、大人、老人など、様々な時期の姿と雰囲気を描き出すことだけでなく、子どもの観点から様々な状況を描き出すことももちろん大事です。

 

「春の妖精」(Fairies in the Spring、1906年、ラッカム作)(パブリックドメイン)

 

ラッカムの絵は非常に分かりやすく、そして、誰が何を言っているのか、あるいは誰が何をしようとしているのかに関して、独自の観点を持っています。そのため、子どもたちと妖精やしゃべる菊などの生きものとの会話内容に想像の空間があるのです。
 

挿絵入りの本の普及

当時のイギリスは産業革命により、人々は毎日、長時間労働しなければなりませんでした。しかしヴィクトリア朝時代の社会になると再び大自然に興味を持つようになったのです。ラッカムの挿絵には植物や動物が多く、若い読者たちに大自然の世界を提供しています。彼は自然環境を背景に、妖精やその他の生きものたちが楽しく遊んでいるところを描き出しています。

ヴィクトリア朝時代の人々は子どもたちが絵を通じて勉強することが効率的であることに気づきました。当時の中流階級は生活を維持することに忙しく、子供の面倒を見る時間を中々作れないため、美しい挿絵が入った子どもの本が一気に普及したのです。

 

ラッカム作の小さな生き物たち。(パブリックドメイン)

 

ラッカムはまた異なるサイズの生きものを描くことを得意としています。例えば、果物から生まれる羽が生えた小さな生きものや、巨人がコックに食べ物を作るよう命じているところなど、これらの挿絵は子どもたちに物の大小の概念を教えているのです。

 

『English Fairy Tales』の中の挿絵(1918年、ラッカム作)(パブリックドメイン)

 

読者を楽しませることが目的なので、ラッカムの挿絵からは単純さと愉快な雰囲気が感じられます。例えば、子どもたちのために演奏している小人たちからなる楽団など、愉快な気持ちになりながら、ファンタジーの世界を見ることができるのです。
(つづく)

(翻訳編集・天野秀)