漢字教育は乳幼児期がベスト? 子供の未来を開く逆転の発想

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「まだ小学校にも行かない幼児にとって漢字の方がひらがなよりも身につけやすい」と聞いて、あなたは信じられるだろうか。「幼児には漢字はまだ無理だ」「ひらがなの方が漢字よりも身につけやすいに決まっている」と思う人も多いだろう。

しかし一見ナンセンスに思えるこの逆説は長年の現場で実証され、現在、600もの幼稚園で実践されている。幼児期に漢字を学ぶことは子供の学力を大いに伸ばす可能性をも秘めているようだ。

 

漢字を学び始めるのは乳幼児期がベスト

幼児期の驚嘆すべき記憶力を疑うものはいない。大人であれば身につけるのに一苦労する言語を幼児たちは難なくマスターする。幼児教育の世界的な権威グレン・ドーマン博士は「幼少時の能力に比べたら、どんな偉大な学者でも、まるで無能力者に等しい」と述べている。

石井式漢字教育の提唱者・石井勲氏も、漢字を覚えるのに一番最適な時期は人生で一番、記憶力が優れている幼児期だと述べている。
しかし本当に幼児が漢字を覚えることができるのだろうか?

子供だった頃、漢字の書き取り練習が楽しかったという大人は恐らく少ないだろう。それは大人たちが「幼児には漢字なんてまだ無理」と考える大きな理由ではないだろうか。

石井氏は3歳から漢字学習をはじめた子供が、小学校にあがるまでの3年間で小学校で学ぶ漢字の読みを全て覚えるのは十分可能だと述べている。
ただここには一つの方法がある。石井式漢字教育では、子どもたちに先に漢字の「読み」を身に付けさせている。

石井氏は幼児に漢字を書かせる事は難しいが、読みを覚えさせるのは大人が考えるほど難しくはなく、むしろ子どもたちは、その優れた記憶力を発揮させ楽しみながらやるという。

そして漢字を「書く」ことについては、何回も読んで字形のイメージが頭に入ってから学んだ方が自然に覚えられると石井氏は語る。他の子と同じように小学校から始めても遅くはないのだ。
 

簡単な漢字ほど覚えづらい?幼児期の頭脳

石井式漢字教育を取り入れている布佐台幼稚園では子供自身が絵本の文字をなぞり読みするという。その絵本は小学生が読むような漢字と仮名が交ざった文で書かれているそうだ。

ひらがなも漢字もまだ学んでいない幼児にとっては漢字も一つの絵のようなもので、「鳩」「蟻」などの比較的、画数が多い漢字であっても、興味をもった子どもは「読み」を、大人を驚かせるほど、どんどん覚えていくようだ。

石井氏によると、ある程度複雑でも、そういう漢字のほうが視覚的に手がかりが多く幼児にとっては覚えやすいと語る。

幼児期の見たものをまるごと覚えてしまう爆発的な記憶能力は、右脳が作用している。また、ひらがなが左脳だけでしか認識できないのに対して、漢字は右脳と左脳で認識できるということが明らかにされている。

幼児がひらがなより漢字を容易に覚えるという大人から見ると信じられないような逆転現象も、この辺が理由として考えられる。

この素晴らしい記憶力が発揮されるのは0歳から3歳の幼児期がピークで概ね7歳〜9歳位までだと言われている。それ以降になると漢字を覚えるのが大変なのは、時期が遅すぎることが原因だとも言え、それはまさに私たち大人が経験してきたとおりだ。

 

漢字によって論理的に思考する頭が作られる

また幼児期に漢字を学ぶメリットは沢山漢字の読みを覚えられるだけではないようだ。

「鳩」という漢字を知っている子どもに「鶴」という漢字を見せると、子どもたちはそれぞれの漢字に「鳥」の部分があることに気付き、鳥に関係する言葉だと推理、判断するようになる。

幼児期の見たものをまるごと覚えてしまう能力は3歳を過ぎた頃から少しずつ低下しはじめるが、それと入れ違いに、左脳によって物事を論理的、分析的に理解し認識する力が発達し始めるという。そのような時期に、漢字に触れる体験を繰り返すことによって、論理的、体系的に思考する頭が自然と作られると石井氏は語る。

石井氏の経験では3歳から漢字学習をはじめた時、知能指数は1年で10ぐらいずつ高くなり3年間で130までに達したケースもあると述べている。

成績をあげるのは国語

漢字学習によって培われた知能は小学校になってから具体的に学校成績に現れてくるだろう。「我が子の学校成績を上げるにはどうしたら良いのか?」これは多くの親が思い悩むことではないだろうか。

石井式漢字教育協会の理事、水野克己氏は「国語は学力の源、国語の出来不出来が総合的な学力を左右する」と述べている。

どの教科を学ぶにしても、教科書を読む読解力、先生の教える事を理解する力は国語力から来ている。漢字の習得は読解力にしろ、理解力にしろ、国語力を伸ばす大きな力となるだろう。

しかし現在の義務教育では国語の授業数は減らされているようだ。

2019年公表のOECDが進めている国際学習到達度調査(PISA)で、日本の読解力は15位と、前回調査時の8位から大幅に順位を落とした。その要因として読書習慣の低下などが指摘されているが、水野氏は小学校では戦前は週に10時間以上もあった国語の授業が、今はたったの4時間程度に減らされていることを指摘している。水野氏はこれでは国語力が落ちてあたり前だと語っている。

 

何のために学ぶのか

石井式漢字教育では子どもたちに論語などの名文を音読・暗唱することに取り組んできた。水野氏にその理由を訊ねてみると「美しい言葉は美しい心を育む」と言う。日本の教育は、寺子屋にも見られるように、漢詩や論語などの暗記・暗誦が必須とされてきた。そのような中で美しい日本語というものが知らず知らずのうちに身体の中に染み込んでいたのだろう。

最近、子どもたちがこうした「美しい言葉」というものを目にしたり耳にしたりすることが少なくなってきているのではないだろうか。現在は学校の授業は減っている事もさることながら、スーパーでの買い物もチケットの購入も無言で済むし、家で遊んではいけないと言われ仕方なく公園で遊ぶが、みんな無言で電子ゲームをする有様だ。

そのような中でSNSやメールで汚い言葉ばかりを書き並べ、ネットいじめをする子どもも出てくる。

水野氏は読み書きそろばんを学ぶこと、目に見える学力(点数学力)をつけることはもちろん大切だが、それ以上に「見えない学力」(規範意識・道徳などの人間性)こそ大切で、これを軽視し、学力が上がっても私利私欲を満たす大人になるだけだと警鐘を鳴らしている。

 

 

大道修
社会からライフ記事まで幅広く扱っています。