親子間の緊急ホットライン「Xプラン」 子どもを守るために親がすること

アメリカの教師バート・フルクス(Bert Fulks)さんは、20歳前の自分をこう振り返っています。「性、薬物、お酒が私の青春の世界に溢れていて、どれに対しても準備不足でした」。また、そのような環境の中で、クラスメートや友人から孤立することを恐れていたことも認めています。

同調圧力

「中学生の頃、友達の家でビールを飲んだのを覚えている。初めは飲むのをためらったが、周りからの圧力を感じ、仕方なく飲むことにした。大人になってから振り返ってみると、バカバカしいと思うが、当時の私はそういう状態だったのだ」と、バートさんは自身のブログに書いています。

友人の悪口を我慢するよりも、雰囲気に流されて「無理やり飲む」方が楽だったのです。「同調圧力」とは、口で言うのは簡単ですが、非常に深刻な結果をもたらす言葉でもあります。バートさんは自分の子供たちに二度と同じような圧力を体験させたくないと思い、そこで考えついたのが「Xプラン」です。

バートさん教師であると同時に、地元の教会で青少年奉仕活動の責任者を務めています。最近、彼は不良嗜癖(しへき)の子供たちが立ち直すためのプロジェクトに参加し、この経験がきっかけで、「Xプラン」を保護者たちと共有することになったそうです。 彼は自身のブログで「Xプラン」の運用方法と重要性を紹介しています。

「Xプラン」

「うちの末っ子ダニーがどうやってパーティーから抜け出したかを言っておきます」。バートさんの説明によると、通常は息子のダニーがどこで何をしていても気にしませんが、スマホで「X」というメッセージが来たときは、すぐに駆けつけるそうです。例えば、息子がクラスメイトのスティーブンの家を訪問した際に、次のようなメッセージの記録があります。

このような「X」のメッセージを受け取ると、まず電話を掛けるというのが通常の流れです。

ダニー「もしもし?」
バート「ダニー、ちょっと用事があって、迎えに行かなきゃいけないんだ」
ダニー「何があったの?」
バート「会ってから言うよ。 5分後に出られるように準備しなさい。 今、そっちに向かってる」

バートさんの子どもたち全員がこの「緊急ホットライン」をいつでも利用できるそうです。バートさんは子供たちのそばに駆けつけますが、彼らに質問はしません。「言うか言わないか、その子次第だ」とバートさんは言います。

「最近、これらの子供たちに『不快に感じ始めたものの、逃げ道がないのでなかなかその場から抜け出せない状況に陥った人はいますか?』と簡単な質問をすると、彼ら全員が手を挙げました。誰もが経験していたのです」、「このような敏感な年齢では、子供たちに“逃げ道”を提供してあげることが非常に大切です」とバートさんは強調しました。

親子理解

バートさんの「Xプラン」には、「親子理解」という暗黙のルールがあります。向かえにいく際に、子供がどんなに遠くにいようと子供を批判したり責めたりせず、自分から問いただすこともしません。多くの保護者は、彼のこのような「手放し」の態度に賛成しがたいかもしれません。しかし、バートさんはこのやり方によって、親子間の信頼感を築くことができ、子供に安心感を与えていると読者に保証しています。

「次の日、子供たちは誰にも説明する義務はない。もし聞かれたら『私事なので、あまり話したくない』と素直に答えればいい。親にとってもこれはソーシャルスキルの経験を伝えるチャンス」とバートさんは自身のブログにこのように書いています。

この方法は、不誠実さや問題回避を助長するのではないかと感じる保護者もいます。バートさんは、方法は方法であって、親子間で腹を割って話すことや、心と心の大切な交流に代わることはできないと強調しました。

子どもが自分で危険に気づき、助けを求める

保護者がこの方法を使うことで、子供に「自分の気持ちに忠実であることの大切さ」を教えているとバートさんは考えています。

バートさんは、重度の依存症を持つ若者と6カ月間の療養生活を送った後、「Xプラン」の重要性を改めて強く認識するようになりました。

保護者である読者に対して、バートさんは「こんな簡単なことで、こんなに大きな違いを生むのです。あなたは、自分の子供と一緒に笑って話すことを望むか、それとも彼らが療養教育センターで半年過ごすことを望むか、あるいはもっとひどいことを望むのかということです」と述べています。

両親がこの技法を用いれば、子どもに「自分の気持ちに忠実であることの大切さ」を教えることができる。(shutterstock)

 

蘇琳