覆される常識 植物油が最も抗酸化作用の強い油ではなかった(2)

(続き)

3.オリーブ油とアボカド油

オリーブ油とアボカド油はどちらも一価不飽和脂肪酸が豊富で、その組成の約60~80%を占めています。一価不飽和脂肪酸の含有量が高いことが、耐熱性の高さに寄与しているのです。

最もよく知られている一価不飽和脂肪酸は、オレイン酸(Oleic Acid)です。飽和脂肪酸よりも健康に良いとされています。主な理由は次の通り:

1. 心臓血管への影響

2. 抗酸化作用

3. 炎症の抑制

つまり、酸化度(油脂が酸素と反応して劣化する速度や程度を示す指標)を確認する実験室研究によると、摂氏 110 度では、エクストラバージン オリーブ油の誘導時間は約 32 時間であるのに対し、アボカド油の誘導時間は約 10 時間です。しかし、Grooteveld氏の研究によれば、より高い温度、摂氏180度では、どちらの油も約90分で酸化し始める可能性があるというのですね。

また、未精製のエキストラバージンオリーブ油とアボカド油では、精製された油よりも抗酸化力が高い傾向にあるそうです。

エキストラバージンオリーブ油やアボカド油を購入する際は、不純物が混入していないか確認することが重要になりますね。この2つの油の価格が高いため、業界はすでに食品詐欺の問題に直面しています。アボカド油に関する以前の調査では、82%が不純物混入または腐敗していたという報告もありますし、オリーブ油なども他の油で希釈されていたこともありました。

エキストラバージンオリーブ油の真偽を確かめる一つの方法は、味を確かめることです。本物のエキストラバージンオリーブ油には、抗酸化作用や抗炎症作用を持つオレオカンタールという成分が、味見するとピリピリしたりすることがあるのですね。買う前に味見するというのは、日本では、ほぼ不可能だと思いますが、偽物を買わされて、それを使い続ける危なさは防げますね。

4.パーム油

パーム油は、パーム果実の果肉から抽出され、約50%の飽和脂肪酸を含んでいます。酸化に非常に強く、酸化安定性スコアは約16時間です。

特に、レッドパーム油にはビタミンEとビタミンAの前駆体であるβ-カロテンが豊富に含まれており、これらの抗酸化物質がオイルの抗酸化作用と鮮やかなオレンジレッドの発色に寄与しています。 しかし、長時間の加熱はカロテノイド(強力な抗酸化物質であり、細胞や組織を酸化ストレスから保護する役割を果たす)を破壊し、オイルの色を褪色化させます。

パーム油を長時間加熱するとカロテノイドが破壊され、油の色が薄くなります(keechuan / PIXTA)

5.ココナッツオイルとパーム核油

ココナッツオイルとパーム核油(ヤシの木の核から抽出)は、どちらも80%以上の飽和脂肪酸を含み、酸化しにくいのです。

しかし、飽和脂肪の長さも耐熱性や抗酸化力に影響するのです。例えば、炭素鎖が長い飽和脂肪酸は、一般的に高い融点を持ち、固体の状態で存在しやすい脂肪酸(例: ステアリン酸)であり、一方、炭素鎖が短い飽和脂肪酸は、液体の状態で存在しやすい傾向があります(例: カプリル酸、カプリン酸)。

これら2つのココナッツとパームオイルは、主に中鎖脂肪酸から構成されているため、他の飽和脂肪酸よりも融点や燻煙点が低くなっているのですね。

ココナッツオイルの実験室研究によると、摂氏110度に加熱した場合、酸化物を大量に生成するのに約51時間かかります。パーム核油の酸化安定性は不明なのですが、化学的にはココナッツオイルと非常に似ており、お互いの代用品として使用することができているそうです。 

6.牛脂、バター、ギー

さて、締めは、動物性油脂の登場です。牛脂は牛肉や羊肉から抽出した脂肪で、長鎖飽和脂肪酸を50%以上含みます。ギー(ギーは通常、バターを加熱して不純物を取り除き、水分と乳固形分を取り除いた純粋なバター脂肪)と普通のバターは、どちらも飽和脂肪酸が豊富で、全脂肪分の70%以上を占めます。しかし飽和脂肪酸の取りすぎは、問題があると指摘されていることを忘れずに。

バターは酸化に対して高い安定性を示し、Inform誌の報告によると、酸化安定性スコアは69時間です。これは、油を摂氏110度に加熱した場合、かなりの量の酸化物が生成されるのに69時間かかることを意味します。

バターの酸化安定性指数に関する研究は限られていますが、ギーと通常のバターを摂氏110度~120度に加熱した場合、最初の20時間では酸化物はほとんど生成されないという研究結果があります。ギーは、摂氏140度までの高温で加熱すると、より高い安定性を示します。ギーが優れた保存特性を持つためには、摂氏130度~140度まで加熱する必要がありますね。

バターは高温調理に非常に強く、バターとラード、ひまわり油、大豆油、ピーナッツ油を比較した研究では、これらの油を摂氏185度で5時間加熱した場合、バターに関連する酸化物が最も少ない結果が出ました。つまり、下手な植物性油よりバターのほうが酸化度が少ないということになるのですね。

でも、なんでもそうですが、取りすぎにはご用心!

ニューヨークを拠点とするエポックタイムズ記者。主に新型コロナウイルス感染症や医療・健康に関する記事を担当している。メルボルン大学で生物医学の学士号を取得。