‘瀕死’の世界遺産 万里の長城も

2006年06月15日 20時19分
 【大紀元日本6月15日】世界の多くの遺跡や景観が、世界遺産に認定されることによって観光スポットとなり、その結果、環境破壊が進むという皮肉な事態となっている。米誌「ニューズウィーク」4月3日の報道によると、ユネスコがこれまでに認定した世界遺産812カ所の内、万里の長城を含む7カ所がすでに人為的な破壊による危機に瀕しているという。

<万里の長城>

 秦の始皇帝が造り始めたと言われる万里の長城は、すでに2千年以上の歴史を持つ。この間、各王朝が拡張・修復を続けてきたわけだが、明の時代に大規模な修復・補強工事が行なわれてからは、数百年にわたって風雨に晒されたままである。そのため、現在の長城は3分の2が風化・老朽化してしまっている。

 ただ、大自然の浸食だけでなく、人為的要因が長城の老朽化にとって直接の致命傷であると言われる。目先の利益を追求する企業が無断で城壁を壊して建築工事を行う、人々が観光名所としてやみくもに開発を進める、さらには、近くの農民が勝手に城壁を利用してブタ小屋や羊小屋にする、といった行為によって、長城はじわじわと侵されている。

<ルクソール神殿>

 エジプトのルクソール(古代エジプトの都テーベ)にあるルクソール神殿は、ナイル川の東岸に位置し、カルナック神殿の付属神殿として、古代エジプト第18王朝の9人目のファラオ、アメンヘテプ3世(在位:紀元前1386-1349年、諸説あり)が太陽神・アメンを祀るために造ったと言われる。

 3300年以上経った今、観光と盗難の人為的破壊に加え、ナイル川の影響によって、ルクソール神殿は現在、極めて危険な状態におかれている。また、国家事業として40年前に建設されたアスワン・ハイ・ダムの影響で、ルクソール神殿周囲の土壌に堆積した塩類が、神殿の基礎柱を浸食し、多くの墓が海水で水浸しになっているという。

 世界遺産基金(WMF)は、ルクソール神殿遺跡を保護するための管理法案を制定し、同建築群に対して、アレキサンダー大王以来の大規模な修繕を行う考えである。

<バビロン遺跡>

 バビロン遺跡は、イラクの首都バグダッドの南90キロに位置し、新バビロニアの王ネブカドネザル2世(在位:紀元前605年-562年)が作った建築群で、世界七不思議の一つである「空中庭園」がある。

 遺跡は、1899年にドイツの考古学者が発見して以来、絶えず略奪、破壊、汚染に遭ってきた。イラクの前大統領サダム・フセインがこの遺跡に巨大な自画像を掛けたこともある。また、イラク戦争終結後、アメリカ軍がそこに塹壕を掘り、軍用車両が遺跡の中にある2600年余りの歴史を持つ歩道を踏み潰した。

<マチュ・ピチュ遺跡>

 「空中の楼閣」とか「インカの失われた都市」と称されるペルーのマチュ・ピチュ遺跡は、その神聖さと神秘的な雰囲気によって、世界の10大懐古聖地の一つに数えられている。

 1911年にアメリカの歴史学者、ハイラム・ビンガムによって発見されて以来、ペルーで最も人気のある観光地となり、毎年50万人の観光客が訪れる。観光業の発達によって、地質断層帯に立つこの遺跡は、山崩れの危険に晒されており、いつ地球上からその姿を消してもおかしくない情況になっている。

 遺跡の悪化が進んでいることから、ペルー政府は、一日の遺跡観光客を500人に制限し、併せて年に1カ月間は閉鎖して修復を行なうことにした。しかし、この救済措置もすでに時遅しといった感がある。

<サンゴ礁三角地帯>

 東南アジアとオセアニアに跨るサンゴ礁三角地帯(コーラル・トライアングル)は、世界でも有数の、多種類の海洋生物が生息する地域の一つであり、現在、3000種類以上の魚類と600種類のサンゴ礁が確認されている。

 しかし、その地域では現在、乱獲と毒薬やダイナマイト等による破壊的漁法によって、海洋生物が激減し、生息地そのものも大きく破壊されており、ハタやナポレオンフィッシュといった多くの観賞魚が絶滅の危機に瀕している。この地域では、さらには、海水温度の上昇によって、サンゴの「漂白化現象」が進み、サンゴ礁の消失も加速している。

<モルディブ群島>

 インド南端から赤道に跨るモルディブ共和国は、約1200のサンゴ礁の小島が26個の輪型(環礁)に並んでできた美しいリゾート地である。

 ところが、80%以上の領土が海面からわずか1メートル以下であるため、地球温暖化による海面上昇によって、完全に海底に沈んでしまう危険に晒されている。

 2004年のスマトラ島沖地震によって起きたインド洋大津波で、モルディブ群島の多くの施設が破壊され、併せて一部の環礁も消失したため、この国の地図が再び描き直されることとなった。環境保護関係者は、損傷を受けたサンゴ礁を再生させ、情況が更に悪化するのを防ぎたいと考えている。

水の都ベネチア(大紀元)

<ベネチア>


 イタリアのベネチアは、街中を運河が縦横に交差しており、運河の両側には独特な風格の建築物が連なっている。まるで街全体が水の上に浮かんでいるようであり、正に「水の都」である。

 しかし、この街は現在、水没の危機に直面している。まず、イタリアが乗っているアフリカプレートが、徐々にヨーロッパプレートの下に滑り落ちており、アドリア海の海面上昇を引き起こしている。

 また、重工業のために地下水を汲み上げたことによって地盤沈下が起きており、さらには、地球温暖化による海面上昇がこの勢いを加速させている。現在、ベニスは、日に日に上昇する海面に直面してなす術がない。

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