発掘!世界「花形」文化、お遍路さん~世界遺産化への道~(2》

念ずれば花ひらく

【大紀元日本1月11日】お遍路さんは四国を、「お四国」と呼びます。四国全体が尊い霊場です。山と海の遍路(へじ)をめぐり、山川草木の全自然の神仏を巡拝します。山に神々が棲むという山岳信仰が、大本にあるのです。山に篭って修業し有難い験(しるし)を得る、日本古来の修験道が誕生します。そして海上の彼方に仏の浄土があるとする、補陀洛(ふだらく)渡海の信仰とが結ばれました。四国を母のように抱擁する海(水の神)と、父のように峻厳な山(大地の神)を跨ぎ歩きながら、天にいらっしゃるお大師様と同行二人で、癒しのお空と一つになることを願います。お遍路さんは、お空の海(空海=お大師さん)の一滴なのです。

四国八十八カ所のお遍路みちの文化は、一巡しても終わりではありません。限りなく循環する生命への巡拝が、四国のお遍路さんの姿として今日まで継承されてきました。一カ所の聖地を目指す巡礼ではなく、聖地全体を何度も循環する巡礼方式は世界に類例がなく、お遍路さん文化のアピールポイントになっています。

1998年1月、市民団体・えひめ地域づくり研究会が、「四国遍路文化をユネスコの世界文化遺産に登録する運動を始める」ことを決議して、遺産化への端緒が切られます。これを受けた仙遊寺宣言が発表され、同年12月には遺産登録署名運動が開始され、この決意が四国全土に広げられてゆきます。一市民団体の呼びかけが、お遍路の世界にうねりを引き起こしました。

【仙遊寺宣言】

① 四国に残された、豊かな自然、人情味あふれる風土、のどかな農山漁村のたたずまいなど、美しい田舎の存在は、私たち愛媛、四国地方に暮らす人間にとっての永久資産だけでなく、都市生活者にとっても「癒しの場」として、必要不可欠な国民的財産である。
② 中でも、千年の歴史を有し、国内で最も多数の参加者を持つ四国遍路の巡礼文化は、弘法大師崇拝を基にしながら、単なる八十八カ所寺院巡拝という宗教儀式を越えて、地域住民一体となっての、遍路者に対するお接待や善根宿の提供という特有な風習を生み、全国にも例を見ない慈悲心あふれる人道的習俗文化を、私たちの祖先はこの四国という風土の中で、はぐくんできたのである。
③ 私たちは、この地に継承され、現地に息づく四国遍路を熟視することにより、郷土の先達の歩みを検証し、埋もれた民衆史や哀切きわまりない遍路物語の歴史事実、そして尊い先祖の悲惨と栄光の宝のプロフィールを学ぶことによって、「四国人が誇れる四国の価値」を再確認した。

同年4月、四国八十八カ所霊場会が、この宣言の要請に応えて協賛の意を表明し、八十八カ寺に趣旨への賛同と力添えを訴えました。その後「世界へんろ道文化を考えるミニ集会」(仙遊寺・小山田憲正住職)が呼びかけられ、遺産化促進の4つの柱が確認されました。

1)四国へんろ道は「癒しと人間性回復」の場であること

2)お接待という、「おもてなしのボランティア精神」を継承すること

3)おへんろ文化を通して、世界の「文化と交流」すること

4)心身の癒しの舞台、四国の自然風土の「環境保全」を図ること

*お接待(お遍路さんに飲食物や善根宿など、無償でおもてなしする習し)

(つづく)