英国人映画監督が講演「チヌリクラン 黒潮の民ヤミ族の船」

【大紀元日本2月20日】台湾から東南にある蘭嶼(ランショ)島に居住する原住民・ヤミ族の風俗を文化人類学的な視点から捉えたドキュメンタリー映画「チヌリクラン 黒潮の民ヤミ族の船」を撮影したアンドリュー・リモンド監督(27)が18日午後、東京三田の台湾資料センターで現地での三年以上にわたる撮影秘話などについて語った。

アンドリュー氏は、1979年にロンドンで出生。オックスフォード大学で中国語を専攻した「東洋通」で、中国語は勿論のこと日本語にも堪能だ。台湾との関係は、オックスフォード大の海外研修がきっかけで、それ以降の同大卒業生は台北から現在北京に研修先が変更になったという。

同監督は、2000年から台北師範大学で学んだが、現地・原住民の風俗に興味を持ち、オックスフォード大、台湾博物館、英国基金会「ロイヤル・ジオグラフィカル・ソサエティ」等からの支援金により撮影機材を蘭嶼島に持ち込み三年以上をかけてドキュメンタリー映画の製作に成功した。同基金会は、エベレストの登山など英国の冒険家・研究者に支援金を援助する伝統的な団体だ。

台湾の東南に位置するこの離島が注目され始めたのは、70年代後半からだ。台湾は現在、原子力開発に取り組んでいるが、その核燃料廃棄物の貯蔵所を80年代から同島に建設、原住民らは缶詰工場かと勘違いし、その工場の正面沖で「モリ漁」を続ける毎日だという。「モリ漁」は、ヤミ族男性がその男らしさを一族社会に証明する伝統的なものだ。

同監督によると、ヤミ族は台湾原住民の中でも最もその伝統的な風習を色濃く残す民族だ。非常に保守的な土地柄で、容易に外地の人を受け入れない。同監督が撮影機材を持ち込んだ当初も、適当な通訳もなく撮影を進めたために現地人とトラブルになったという。

ヤミ族の神話によると、その先祖は「石と竹」に入れられて天から降ってきた。あるいは、フィリッピン・バタン島からやって来たという言い伝えもある。「ヤミ」は、現地語で「私たち」の意味だ。撮影では、原住民による「チヌリクラン」の製造過程が詳しく追跡されている。「チヌリクラン」とは、現地の伝統的な大型漁船で、10人乗りのものが造られるのは実に27年ぶりだ。

「チヌリクラン」の進水式では、実際の進水式の撮影に当たり、権利を一万元で購入した。しかし、その他の原住民のライフスタイルを撮影するには金銭的なもののほか、種々の障害に遭ったという。現在、ヤミ族の30代以下の若年層は全く現地語を話せず、もっぱら学校で習得した中国語を話す。40代から60代は、逆に中国語は下手でヤミ語を話しているので、台湾本島との交易には苦労している。70代以上は日本語が堪能で、ヤミ語を日常会話で使っているという。

「チヌリクラン 黒潮の民ヤミ族の船」は日本語版の他、英語版も既に完成しており、同監督は長期にわたる現地ロケで「資金的にもきつくなってきた。非常に疲れた・・・休みたい」と率直な感想を口にした。BBCなどドキュメンタリーで定評のある英国出身の同監督は、「今後は、大学に復学して文化人類学を勉強するかもしれないが、ドキュメンタリーは各地で撮り続けていきたい」と抱負を力強く語った。

同ドキュメンタリー映画は、3月2日(金)午後6時から、きゅりあん(品川区立総合区民会館)一階小ホールで、処女公開される。

主催:ヴィジュアルフォークロアの映像を見る会

問い合わせ 03-3352-2291

講演するアンドリュー・リモンド監督(東京三田の台湾資料センターにて、大紀元)

ヤミ族伝統の「鉄兜」(写真=アンドリュー・リモンド監督提供)