【ショートストーリー】樹の物語

【大紀元日本8月4日】マリーおばあちゃんはアマチュアの園芸家だ。汗水流して自分の庭を手入れするので、どの草もそれに応えて、花を咲かせ、果実を実らせてくれる。

おばあちゃんは南カリフォルニア州に引っ越し、新しい庭作りをすることになった。まるで、新たな冒険に挑戦するかのように、すぐさま仕事に没頭した。

ところが、おばあちゃんがどんなに苦心しても、庭の真ん中に植えたがどうしても実を結ばない。勉強好きなおばあちゃんは、身近にある果樹栽培の本を全て読み、その樹に花を咲かせる方法を探しだそうとした。樹に寄り添って話しかけたり、樹に歌を歌ってあげたり、道理を話して聞かせてあげたりしたが、みんな上手くいかなかった。

そこで、おばあちゃんはカリフォルニア州農業局の専門家に教えてもらうことにした。専門家のアドバイスは、そのほとんどはおばあちゃんがすでに試したことだった。ただ、一つだけ、不思議なアドバイスがあった。「竹箒の柄で果樹の根元をたたき、根を刺激する」というものだ。

70を過ぎたおばあちゃんが、実を結ばない果樹を箒の柄でたたきながら教え諭しているのを見たら、近所の人たちはきっと、おばあちゃんはぼけてしまったと思うにちがいないだろう。そこで、おばあちゃんは、周りを見回し、誰も見ていないのを確認してから、樹の根元をたたくことにした。樹の根元をたたけば、その震動が元気のない根に伝わり、活力を与えるだろうということは理解できた。しかし、それで本当に、おばあちゃんが待ち望んでいる果実が実るのか、確信は持てなかった。

ところが、翌年の春、その樹が花を咲かせ、実を結んだのである。子供たちはそれ以来毎年、新鮮な果物をいただくことができるようになった。

おばあちゃんが亡くなる少し前、私はちょうどつらい時期を経験していた。私はおばあちゃんに電話して、慰めてもらおうと思った。私たちは一緒にあの樹のことを思い出した。おばあちゃんは、「絶えずたたいてあげたから、眠っている果樹が蘇り、花を咲かせ実をつけることができたのよ。今、苦しい環境があなたの『根っこ』をしきりに刺激しているからこそ、あなたはそのうちきっと成熟し、とても多くの実を実らせることになるわ」と話してくれた。

(明心ネットより編集・翻訳)