【生活に活きる植物】19・彼岸花(ヒガンバナ)

【大紀元日本10月15日】ヒガンバナは中国原産で、日本各地に群生するヒガンバナ科多年草。秋分の日前後に40センチ位の太い円柱形の花茎を出し、その先に数個の反り返った真紅色の細長い花弁を輪生状に咲かせます。開花終了後、平たい艶のある葉が出ます。全草有毒ですが、非常食ともなり、鱗茎を乾燥したものは石蒜(せきさん)という生薬になります。

【学名】Lycoris radiata
【別名】曼珠紗華、ホトケバナ、ハカバナ、キツネバナなど多数
【成分】アルカロイド(リコリン、セキサニン、ガランタミンなど)

【薬用効果】石蒜は、去痰、利尿、解熱作用を有しますが、毒性が強いので、今では外用だけに利用されます。生の鱗茎をすり潰し患部に冷湿布、または生汁をつけると、乳腺炎、腫れ物、たむし、あかぎれ、打ち身、捻挫、肋膜炎に有効です。中毒症状としては嘔吐、下痢、腹痛、痙攣、呼吸麻痺などが表れるので充分な注意が必要です。

【食用】鱗茎はデンプンに富み、有毒成分のリコリンは水溶性で長時間水に晒せば無毒化できるため、戦時や非常時に食用とされました。しかし、平常は絶対に口にしてはいけません。春先の葉だけの時期には、ノビルなどと見誤り食べると危険なので注意が必要です。

【余録】ヒガンバナは地中の小動物を避けるため、稲作とともに持ち込まれた有用植物でもあります。しかし、日本に伝わったのは雌株だけで、種子で増えず株分けによって広まったとされています。中国では、種子の付くヒガンバナが繁殖しています。

日本では、秋の彼岸の中日前後に確実に咲く花ですが、今年は酷暑の影響からか、開花は1~2週間も遅れました。彼岸に咲く真っ赤な花は不吉であると嫌われ、家の中に入れることも嫌がられたものですが、各地に群生地の名所があり、秋の季語として古代から文学の世界で親しまれています。一方、別名の曼珠紗華は天上の花とされ、吉兆を意味し、欧米では多くの園芸種があります。白花彼岸花もありますが、これは別種のショウキズイセンとの雑種ではないかといわれています。

ショウキズイセン

白花彼岸花

(文/写真・ハナビシソウ)