人生の醍醐味

【大紀元日本3月24日】普段は人に親切で、けっこう才能もあるが、最大の欠点を持つ男性がいた。その欠点とは、よく不平をこぼすことだった。彼はチャンスをつかんでも、絶えず不満を口にした。担当者の処理が不公平であるとか、会社の資源の分配が気に入らないとか、何かと文句をつけ、さまざまな社会現象について批判した。彼の同僚や友人は、みな彼の愚痴を聞くことにうんざりした。そのうち男性は孤立するようになり、世の中に対して怒りと憎しみを抱くようになった。

ある日、男性は胸いっぱいの恨みと憤りを、ずっと自分に関心を寄せてくれていた恩師に伝えた。恩師は彼の話を聞き終えると、「日曜日、うちに食事に来なさい」と彼を誘った。

日曜日になり、男性は恩師の自宅を訪ねた。恩師はちょうどキッチンで料理を作っていた。男性がテーブルの上を見ると、大きな鍋にスープが入っている。その脇には、一箱分の塩とスプーン、そして小さいスープのお碗が置かれていた。恩師は男性に、「塩を一さじ、小さいスープのお碗に入れてください」と要求した。

「先生、小さいお碗にこんなに多くの塩を入れたら、しょっぱすぎますよ」と男性はためらいながら言った。しかし、恩師は笑顔で「そんなに考えなくてもよいから、言われたとおりにやりなさい」と答えた。

男性は言われた通りに、一さじの塩を小さいお碗に入れた。続いて、恩師は彼に、そのお碗のスープを飲むことを勧めた。男性は逆らうことができず、しょっぱいスープを飲んだ。

「味はどう?」と先生が尋ねた。

「とてもしょっぱくて、苦いです」と男性は眉間にしわを寄せながら、渋い顔をした。

「スープの味は、分かりましたか?」と恩師が聞いた。

「まったく分かりません」と男性は頭を振りながら答えた。

すると恩師は、彼に一さじの塩を大きな鍋に入れるよう要求した。そして、今度はその鍋のスープを味見するよう勧めた。

「味はどう?」と先生は笑顔で男性に聞く。

「うまいです、こっちのスープはとてもうまい」と男性はうなずいた。

「スープの味が分かりましたか?」

「もちろん、分かりました。大根と骨付き肉を煮たスープですね。大根の味がとても甘いです」と男性は称賛した。

その時、先生は男性に言った。「生活の中で思い通りにならないことは、塩に例えることができます。常に不満をこぼしていると、まるであの小さいスープのお碗みたいに狭い度胸で物事を考えてしまいます。それは役に立たないばかりか、自分の優れたところまで覆い隠してしまいます。それは、ただ他人に不快な印象を残すだけです」

「塩の味がしょっぱくて苦いことは、私たちは変えることができません。しかし、もし私たちが広い度量でぶつかった挫折を受け入れ、自分の実力を鍛えることができれば、思い通りに行かなかったことは、あなたを打ち倒すことができません。それは、全部あなたの醍醐味になります」

筆者である私も、かつてはよく文句を言う人間でした。絶えず上司のやり方に不満を覚え、人に会うと愚痴をこぼしました。

しかし、私が不平をこぼすことは役に立たないばかりか、自分をますます孤立させていることにある時、気づきました。私は不平を口にすることを止め、自分が一人前になるよう仕事を一生懸命行いました。その結果、半年後には順調に、自分に合う他の仕事を見つけることができたのです。

人生には思い通りにいかないことが必ずあります。度を越えない程度なら文句をいい、不満を訴えても問題にはなりませんが、積極的にその問題に直面しない限り、恨みの念は消えることがなく、前進する原動力は生まれません。

(翻訳編集・李暁清)