【味の話】 唐辛子

【大紀元日本7月11日】ここ数年の激辛ブームやダイエットなどで話題の唐辛子。しかし、1980年以前は、薬味や香りづけに一味唐辛子や日本特有の七味唐辛子が少量使われる程度でした。市販のカレーでさえ現在ほど辛口の商品はあまりなかったのです。

インドやタイ、韓国など唐辛子が日常的に使われる国や地方では、小さい頃から徐々に辛い味に慣らしていき、胃腸を刺激に対して強くしているそうです。一方、日常的に辛味を使う習慣のない日本では、味覚としての辛味というよりも「痛み」として認識されるため、年配の人を中心に苦手とする人が多いようです。

日本には、ポルトガル船によって伝わったと言われています。唐辛子というので中国から伝わったと思われていますが実はそうではなく、唐とは外国の意味で使われていました。コロンブスによって中南米からスペインに持ち帰られ、その後わずか200年の間に世界中に広まり、各地の食文化に革命をもたらしたと言われています。

唐辛子は、辛味種と甘味種に分類されます。日本産で最も辛味の強い品種(赤唐辛子)が熊鷹(くまたか)。一方、獅子唐(ししとう)は甘味種で、先端が凹んで獅子の鼻に似ているため、シシトウと呼ばれています。10個のうち一つぐらい、どういうわけか辛い実が混ざるため、食べ物界のロシアン・ルーレットと言われています。

世界の唐辛子には、いろいろな品種があります。タバスコに使われるCayenne (カイエン)、最も辛いとされるHabanero (ハバネロ) 、短くて緑色のJalapeno (ハラペーニョ)、辛みはさほどないNew Mexico chilies (ニューメキシコ・チリ)、サルサに使用されるSerrano (セラーノ)、タイで栽培されている青い激辛唐辛子のPrickeene (プリッキーヌ)、激辛なのになんとなく甘い香りがし、四川の基本の味となる朝天辣など。

これらの唐辛子を多く使用した料理には、メキシコ料理、タイ料理、韓国料理、中国の四川料理などがあります。唐辛子を積極的に摂取するのは夏に暑い地域が多く、発汗を促し、暑さ負けを防ぐためであると言われています。唐辛子の辛味の主成分であるカプサイシンは血行を良くし、食欲を増進させ、発汗を促す作用があり、それによって体温を調節する効果があります。人間の体は、周りが暑くなると、汗をかいたり血管を広げたりして体温を逃し、暑さに対応しようとしますが、この体温調節は自律神経の働きによるものです。しかし、最近日本では冷房などの影響で、自律神経の働きが鈍り、体温調節ができず、熱中症にかかる人が増えているそうです。蒸し暑い日本での暑さ負けを防ぐため、自分で体温調節をできるよう日頃からの工夫が必要です。

夏バテ防止・解消の食材の一つとして香辛料があげられます。カプサイシンは発汗作用の他、胃の粘膜を保護し、胃痛や胃もたれ、胃炎などを防ぎます。辛いから胃に悪いようなイメージがありますが、実際には、胃の粘膜が刺激され粘液で保護されることから、逆の効果があるのです。これが食欲増進に繋がり、消化の促進が期待できます。また、カプサイシンは脂肪分解酵素を活性化し、体内脂肪の分解を促す上、血行を良くして新陳代謝を活発にし、ダイエットに効くといわれています。

その他にも、唐辛子に含まれるプシエイトという物質が注目されています。プシエイトはエネルギー消費を増やし、代謝機能をアップさせるので、体温を上昇させます。そのせいで汗が大量に出る人もいます。

唐辛子は小さく切るほど辛味が増します。また種のまわりの内壁の部分に強い辛味があるので、あまり辛くしたくない時は丸ごと使うとよいでしょう。辛味成分は油に溶け出しやすいので、油で唐辛子を炒めて辛味を移してから使う方法もよくとられます。100℃の時にもっともよく辛味が溶けるので、一気に加熱せずに弱火でじっくりと炒めます。

そのほか、除虫の効果があり、園芸では他の作物と共に植えて虫害を減らす目的で栽培されたり、食物の保存に利用されたりと様々な用途に活用されています。唐辛子には殺菌作用や食中毒を防止する効果もあり、とても優れた食品なのです。

(文・大鬼)