【紀元曙光】2020年1月11日

病(やまい)は「病む」が名詞化したもので、どこかに悪いところがあれば人間の体は停止する、つまり「止む」を語源としている。動かない「山」も、同じ「やむ」からでた言葉である。
▼「病」は、医療だけの対象物ではない。病態という言葉を「非常に好ましくない状態」と見るなら、それは人体だけでなく、集団や社会、ひいては国家そのものの悪しき状態にまで敷衍することができるからである。
▼中国の武漢市で発生した肺炎は、新型のコロナウイルスが原因であるという。患者数は、同市当局の発表によると、5日までに59人に上っている。ただし、往々にして中国当局は発表する数字を操作するため、情報の数値に疑問は残る。
▼たとえ示威的操作はないとしても、その分布が広範囲に及んだ場合、中国では実体をつかむことが困難となる。現在のところ範囲は武漢に止まっているが、武漢そのものが中国有数の大都市であるから、いつどこから、その枠を飛び出すか分からない。
▼小欄は中国の医療について語りたいのではない。この度の肺炎発生は新型コロナウイルスが直接の原因であるとしても、中国そのものが重篤な病態であることに究極的な原因があるのではないか、ということなのだ。
▼道徳をなくし、文化を失い、腐敗や汚職が蔓延した社会は、それ自体が瀕死の重病人なのである。残されたものは、極端な利己主義と拝金思想、権力による暴力と不当逮捕。極めつけは、臓器狩りという悪魔的な医療ビジネス。これでは健全な社会など望めるはずもない。元凶を除去しない限り、中国の病は尽きないだろう。