【紀元曙光】2020年2月18日

「すいきん、ちかもく、どってん、かいめい」。子どもの頃、呪文のように唱えて惑星の名前と順番を覚えた。その中の「めい」つまり冥王星は今、かわいそうに仲間外れにされているらしい。
▼かつて九大惑星の一つであった冥王星は、2006年から「準惑星」の扱いになったという。判断が変わった理由は、素人の筆者にはよく分からない。なんでも冥王星は、地球の衛星である月よりも、だいぶ小さいらしい。
▼現代の天文学で、そうしたことまで詳しく分かるようになったのは、すごいと思う。1930年、米国の天文学者クライド・トンボーが1月23日と29日の写真乾板を精密に分析した結果、その中で動いている星を発見した。この冥王星の発見が同年2月18日、つまり90年前の今日である。
▼確かに、現在発見されている太陽系の惑星のなかで最も遠くにある冥王星に探査機を飛ばし、詳細な写真を撮り、それを遥か地球まで電送する技術は、同じ言葉を繰り返すが、天文学90年の技術的進歩はすごいものだと思う。
▼一方、こんなことも思う。たかが太陽系の冥王星までではないか。渺茫たる大宇宙に比べれば、人類の知見と認識など、まだその程度の狭さ、その程度の未熟さではないかと。
▼筆者は、子どもの頃から星を眺めるのが好きだった。濁った東京の夜空に、星は指で数えられるほどしか見えなかったが、宇宙というものは人間の遥か頭上に、神のごとく、尊く存在するものであることを体感したように思う。天文学の究極的な結論は、「宇宙は大きく、人間は小さい」という謙虚なものであってよい。