【紀元曙光】2020年5月4日

「5月3日憲法」というのがある。日本国憲法ではなく、1791年5月3日にポーランド・リトアニア共和国(以下ポーランド)で採択されたものである。
▼これが欧州最古の、つまり欧州で初めての近代的な成文憲法であり、同年9月3日に制定されたフランス憲法よりも早い。ちなみに、世界最古の憲法は1787年のアメリカ合衆国憲法である。本朝聖徳太子の「十七条憲法」は604年の成立だが、ここでは別のカテゴリーとする。
▼ポーランドは、中世の13世紀にモンゴル人の大襲撃を受けたばかりか、近世から近代に至っても、周辺の強国に分割される屈辱を受けた。しかし、それでもなお一定の精神的領土を保ち続けたという意味で、奇跡の国家かもしれない。
▼紙幅が乏しいので結論を書く。229年前のその日に「5月3日憲法」という誇るべき憲法を持ったことが、その後の歴史において、ポーランド国民の精神的支柱になったことは疑いない。20世紀には、西からナチス、東からソ連が、巨岩をころがすように重戦車で侵入してきた。第二次大戦後の1945年から89年までは、ポーランド統一労働者党(共産党)が独裁する社会主義国だった。
▼その中で、労働者団体から出発し、後に反共の旗幟を鮮明にする組織「連帯」が台頭。89年6月に始まる東欧革命で、レフ・ヴァウェンサ(ワレサ)率いる連帯が、世界史上に輝く、暴力なき民主化を達成した。
▼同じ89年6月。民主化を求める愛国学生を、中国共産党は、党の軍隊の戦車で轢きつぶしている。「六四」を思い出したら、いやな頭痛を覚えた。