【紀元曙光】2021年2月8日

今日は「東京二八蕎麦の日」だそうだ。
▼ソバの原産地は中国の雲南省あたりという。日本には奈良朝以前に伝来していたことは確実とされる。ただし、ソバを粉にひいて練り、団子状のものを茹でて食べる「蕎麦がき」の歴史が長かった。今日のような「蕎麦切り」になったのは江戸期の後半からである。
▼落語の「時そば」でもお馴染みの二八蕎麦。名前の由来は2説ある。「蕎麦粉が8分に、つなぎの小麦粉が2分だろ」「いやいや代金が二八の十六文。だから二八ってえんだよ」。これは後者の説が有力とされている。つまり十六文という定価(1文30円として480円ぐらいか)が、なんとなく決まっていて、そのぶん中身や味で勝負するという結構なものだったらしい。
▼「客二つ、つぶして夜鷹三つ喰い」。意味は省略させていただくが、コンビニのない江戸時代に、風鈴を鳴らして売りに来る夜啼き蕎麦は、実にありがたい食べ物だったに違いない。
▼300年後の今も、日本人は蕎麦好きである。なかには自分で蕎麦を打って客にふるまうことを「男の趣味」にしている御仁もいる。ソバの収穫期は初夏と秋の2期があるそうだが、秋から初冬にかけて収穫される新ソバは、香り高く、味も格別とされる。
▼さて小欄の筆者も含めて、蕎麦好きの日本人は覚悟しておかねばならない。日本で流通するソバのうち8割が輸入もの。その輸入ソバのうちの8割が中国産である。昨年、中国の農業は、洪水や異常気象のほか、イナゴやヨトウガなどでも大被害を受けた。その食糧危機が、今春から表面化することは不可避である。