孝行の理念と伝説(二)

閔子騫(びんしけん)の物語

古文書や民話には、親孝行の例が数え切れないほどあります。

親孝行の人は、常に博愛正義の心を持っています。

孔子の弟子の閔子騫(びんしけん)は幼い時に母を亡くし、父が再婚して異母弟2人ができました。

継母は実子2人を愛したが継子の閔子騫を憎んで、よく彼を虐待しました。

冬になると実子には木綿入りの防寒着を与えましたが、閔子騫には蘆の穂を入れた「綿の服」を与えました。

ある日、父親が外出した際、荷車を引いている閔子騫は寒さに耐えられず、震えながらロープを地面に落としてしまいました。

父親に叱責され殴打された閔子騫は、服の縫い目が破れて、蘆の穂が飛び出し、その時父親は閔子騫が継母に虐待されていることを知りました。

父は家に戻り、継母と離縁しようと言うと、閔子騫は「母上が去られては、3人の子供は凍えます。私1人が凍えていれば、弟2人は暖かいのでどうか離縁しないで下さい」と言いました。

父親はとても感動し、応じました。

それを聞いた継母は、自分の過ちを後悔し、以後は実母のように閔子騫を可愛がりました。

それを聞いた孔子は、「子騫は真の親孝行な息子だ」と褒め称えました。

伝統文化の衰退に伴い、親孝行の理念は次第に現代思想に圧倒され、支えのない孤独な高齢者が増えています。

しかし、身内を大切にし、年長者を尊重し、年配の親のために最善を尽くし、親と一緒に暮らすときは親の意向に反しないように努めていて、たとえ親が本当に間違っていたとしても、丁寧で親切に優しく親を説得する人はまだまだ、たくさんいます。

このような人は、現代社会では親孝行のお手本とも言えます。

康熙帝はかつて、国の平和と長寿を象徴するために、「千叟宴」(せんそうえん、皇帝が千人の老人を宮殿に招いて開いた長寿を祝う宴)を開きました。

お年寄りが長生きできるのは、心身ともに健康で、親孝行が普及しているからです。

ほとんどの長寿のお年寄りは、夕暮れの年を穏やかで楽しむことができることは、まさに国家の道徳と国民の徳行を反映しています。

中国の伝統文化は博大で深遠なものであり、その伝統的な価値観は世の中に普遍的に認可されている宝物となります。

中国の伝統文化は道徳品格を重視し、社会的形態がどのように変化しても、誠実、善良、勇気、忍耐などの正統的な道徳的理念が常に人々の心に響き渡ります。
 

(翻訳編集・啓凡)