南極の海底900mから「新種の生物」発見

英国の科学研究チームがこのほど、南極西部の棚氷(たなごおり)でボーリング作業を行ったところ、棚氷より下の深さ900メートルの海中で、現状が海綿のような未知の生物を発見しました。

採取点の海水温が氷点下であるにもかかわらず、これらの生物は非常にたくましく活動しています。しかし、それらがどこから来たのか、どのように餌を食べていたのか、その分布状況もふくめて、全てが謎のままです。

科学者たちも不思議に思っており、未来の研究者によって、より深く探究されることを望んでいると言います。

南極西方のウェッデル海にあるフィルヒナー・ロンネ棚氷は150万平方キロメートル以上の面積をもつ、南極大陸で2番目に大きい棚氷です。

この棚氷は公海から260 km離れており、最も近い食物源から300 km以上離れています。棚氷の下の海中は、完全に暗く、水温はいつもマイナス2.2度です。これまで研究者たちは、氷上に8つのボーリング孔を開けていましたが、900メートルの深度における生物の存在は、ほとんど知られていませんでした。

最近、英南極調査局(BAS)の地質学者チームは、泥のサンプルを採取するために氷のボーリングを行っていました。

フィルヒナー・ロンネ棚氷に900メートルの深い穴を掘りましたが、行き当たったのは、当初推定していた深度の海底の泥土ではなく、岩石でした。しかも驚いたことに、そこでカメラが捕えたのは、ねばりつくように存在する数々の「生物」だったのです。

黒い石の上に魚、ワーム、甲殻類のような小さな動く生物を含め、多くの生命体が付着していることが分かります。

人間が今まで見たことのない種も数種存在し、エノキタケのような茎を持つ生物もいれば、海面(スポンジ)のような生物もいます。

BASの地質学者ジェームス・スミス氏は、「私たち地質学者は、氷棚の下の堆積物を採取しようとしたのです。ところが、カメラが巨岩にぶつかり、そこに生物がいる映像を見た時は、実に意外でした」と驚きを露わにします。

これらの生物について、ある生物学者は「おそらく南極の深海に適応した濾過摂食(ろかせっしょく)動物であり、しかも新種である可能性が高い」と見ています。

「これは、この地球上に、生物学者が理解しないルールで生きている生命が、まだ存在することを示している」

「私たちはこの世界について何も知らない」と、その生物学者は語っています。
(翻訳編集・鳥飼聡)