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英国が台湾有事への対応を明言 「沈黙は抑止にならない」元英国防相

2025/07/28
更新: 2025/07/28

ジョン・ヒーリーイギリス防相は7月、台湾有事に際し、イギリスが同盟国と連携し戦闘準備を着実に進めていることを強調した。また、アジア太平洋地域の安全保障環境をめぐり、多国間協力の重要性も訴えた。

中国共産党(中共)による台湾への軍事的圧力が強まる中、台湾海峡の緊張は国際社会にとって深刻な懸念事項となっている。27日、ヒーリー国防相は、台湾をめぐる紛争発生に備え、イギリスが太平洋地域での作戦展開に万全を期していることを明言した。これはイギリス政府として台湾支援に対するこれまでで最も強い警告であり、確固たる決意を示すものとなった。

英豪防衛トップともに「台湾有事」への関与表明

ヒーリー国防相は27日、オーストラリア副首相兼国防相のリチャード・マールズ氏とともに、オーストラリアのダーウィン港に寄港中のイギリス空母「プリンス・オブ・ウェールズ」に乗艦した。同空母は間もなくアメリカをはじめとする同盟諸国とともに、米豪主催多国間共同訓練「タリスマン・セイバー25」合同演習に参加する予定である。

英紙デイリー・テレグラフの記者が「中共による台湾への軍事的挑発が激化した場合、イギリスはどのような準備を進めているのか」と問いかけると、ヒーリー国防相は「戦争に突入する事態になれば、イギリスとオーストラリアはこれまで同様、肩を並べて共に戦う。合同演習を通じて、より実戦的な備えを整えることで、連携による抑止力を一層強化できる」と答えた。

この発言は、イギリス政府が台湾海峡危機に対しかつてないほど明確な覚悟を示したものといえる。ヒーリー国防相は、補足として「イギリスとしては、インド太平洋地域におけるいかなる紛争も、平和的かつ外交的手段によって解決されることを望んでいる」と強調した。さらに、「同盟国との結束によって平和を確保する」と述べ、多国間協力の重要性を訴えた。

マールズ豪副首相も「オーストラリアは台湾と経済的な関係を有しているが、政府としては台湾海峡の現状維持を重視している。地域の平和と安定のため、一方的な現状変更には断固反対する」と述べ、地政学的リスクの回避に向けた明確な姿勢を示した。

アメリカ司令官「習近平政権は2027年までに軍備強化」

アメリカ戦略司令部のコットン司令官は、昨年の年次国防会議で「習近平は2027年までに台湾侵攻を実現する計画を掲げ、陸海空および核戦力の装備やインフラ整備に資源を集中している」と指摘した。

台湾有事の危機は一層現実味を帯びており、世界の専門家たちも「中共による台湾侵攻は大規模な衝突に発展し、各国が巻き込まれる可能性が高い」と警鐘を鳴らしている。さらに、台湾が世界最先端の半導体生産拠点であることも、危機の国際的連鎖を予測させる重要な要素となっている。

ヒーリー国防相も、「インド太平洋地域の脅威は増大しており、中共軍は係争中の島礁を実効支配するとともに、周辺諸国に対し威嚇的な行動を続けている」と指摘。イギリス政府は今年策定した国家安全保障戦略において、「台湾周辺の情勢悪化リスク」を深刻な懸念事項として明記し、政府中枢でも危機意識が一段と高まっている。

「沈黙は抑止力にならない」 元イギリス防相

2017~19年イギリス防相を務めたギャビン・ウィリアムソン元国防大臣は、「インド太平洋の脅威が明白となった今、イギリスはこれまで以上に率直な発信を行うべきだ」と訴えた。

「沈黙によって有事の発生リスクを下げることはできない。他国の敵対的かつ危険な行動がもたらす結果を明示することこそ、真の抑止力である」と述べ、さらに「現職防相のように台湾侵攻への対応を明確に示す姿勢が極めて重要だ」と強調した。

アメリカ軍も2027年までに即応体制を引き上げ

アメリカ政府は中共を「忍び寄る脅威(pacing threat)」と位置づけ、海軍の防空能力強化やハイエンド戦争への対応力向上を急務としている。バイデン前大統領は台湾防衛への明確な支持を表明しており、トランプ大統領も習近平に対し「台湾侵攻があれば北京を爆撃する」と警告した事例が報じられている。

また、アメリカ海軍のキルビー上将は「2027年までにアメリカ海軍の即応体制を80%まで引き上げる」と述べ、「中共がその年に台湾海峡戦争の準備を完了すると見ている」と述べた。もし台湾有事が発生すれば、西太平洋においてアメリカ軍および同盟国の軍が全面的に関与し、海軍戦力が決定的な役割を果たすと見込まれている。

日英両国も連携を強化

イギリス空母「プリンス・オブ・ウェールズ」は今年4月から8か月間にわたり「ハイマスト作戦」を展開している。F-35Bステルス戦闘機最大24機を搭載し、地中海、中東、東南アジア、日本、オーストラリアを巡り、多国間演習を実施している。日本の防衛省によると、同空母打撃群は8~9月にかけて日本を訪問し、海上自衛隊との日英共同軍事演習に向けた調整を進めているという。

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