「僕は必ず歩く」自力で立ち上がった白血病の少年

スコットランドの小さな町、ムッセルブルグに住むエマ・デビッドソンは40歳。フラワーアーティストの職業と、6人の子をもつ元気な母親です。夫のクレイグ・ホッグは43歳。この賑やかで幸せあふれる一家に今年3月、突然の不幸が襲いました。
6人いる兄弟姉妹の4番目、15歳の男の子であるエダン・ホッグが3月4日、急性骨髄白血病(AML)と診断されたのです。

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がん細胞は、すでにエダンの脊髄に浸透していました。一週間ほど背中の激痛に苦しんだエダンは、ふと気がつくと、自身の体の異常に衝撃を受けました。「足が、動かない」。

エダンの両脚は完全に麻痺していました。慌てた両親がエダンを連れて訪れた病院で聞かされたのが、先述の病名でした。

医師の口から出た「エダンは、残念ながら、もう歩けないかも知れません」という言葉が、岩のような重さで両親の上にのしかかりました。

それから数カ月後のことです。母親のエマは、喜びと感動を抑えきれない様子の電子メールを英文大紀元に寄せました。

「もう歩けない」と言われたエダンが、補助器具なしで、自力で立ち上がったというのです。エマは、誰にも支えられずに立ち上がった瞬間の我が子を、動画撮影しました。

「最初にエダンが補助器具なしで立ち上がったのを見たとき、私はとても興奮しました。私はエダンを誇りに思っています。それはほんの数秒でしたが、彼が立っている姿を再び見ることができるとは思いませんでした」

病気と勇敢に戦って回復を目指している15歳の我が子を、エマは「勇士」と呼んでいます。

両親であるエマとクレイグ、それからエダン以外の5人の子供たちは、エダンの絶望的な病名を聞かされたとき、家族みな頭を抱えて泣きました。

エマは、数か月前の自身を振り返ってこう語ります。

「ほとんど毎日、私は心配と恐怖にさいなまれました。母親の私が、何日もベッドに横になって泣いてばかりいたのです。なぜ私の子供にこんなことが起こるのか、と虚空に問いかけていました」

エマは、「エダンのために強くならねばと思いましたが、子供がこれほど苦しんでいるのを見ながら何もできない自分に無力感を感じた」と述べました。

MRI検査の結果、エダンの脊柱にはがん性の血液の固まりがあり、背中の痛みと両脚の麻痺を引き起こしていました。

エダンを担当する医療チームは、このがんを治療可能だと考え、その方法を探り続けました。放射線治療や血小板の輸血などを6カ月間に4回行う一方、化学薬品をエダンの脊髄液に直接注入する腰椎穿刺を行いました。

そうした病院の治療効果に加えて、エダン自身の楽観的で朗らかな性格、そして両親と家族の真摯な祈りが実って、先日の「母の感動」があったのです。

自宅には車椅子を使う設備がないため、エダンはまだ入院しています。治療はまだ続いていますが、エダン本人はとても明るく受け止めており、いつもテーブルに並べたピスタチオを使って看護師を笑わせているそうです。

一時は悲嘆に暮れたエマでしたが、あとでエダンがいつも口にしていた言葉を思い出しました。

「彼は最初から、僕は必ずまた歩く、と言っていたのです。それから、今でもこんな言葉を繰り返しています。一歩一歩いくよ、と」

(翻訳編集・鳥飼聡)