北欧神話 主神オーディンの物語(1)

北欧神話の主神オーディンは北欧の神々の父であり、水曜日(スウェーデン語でonsdag)はオーディンにちなんで名づけられたと考えられています。 

オーディンは、スカンディナヴィア神話では、白髭を生やし、大きな幅広の帽子をかぶり、槍を持ち、8本足の黒馬に乗り、肩に2羽の聖鳥、足元に2匹の大きな狼を従えた老人の姿で描かれています。 そして何よりも驚いたのは、知恵のために自分の目を切り取って知恵の井戸に入れ、以後、片目の賢者オーディンとなったことです。

オーディンはアース神族の主神で、勝利、詩、知恵、嵐、戦争、死の神でもあります。彼は度々、グングニル(小人が作った長槍)を手にし、目標めがけて投げると必ず命中します。軍隊に投げつけると軍隊は敗れ、戦士は死に絶えました。 

オーディンの愛馬、黒い仔馬のスレイプニルは、4対の脚を持ち、風のように空や水上、地上を選ばず移動できます。

またオーディンの肩には、フギン「思維」(Hugin)とムニン「記憶」(Munin)二羽のワタリガラスが乗っています。彼らは毎朝世界中を飛び回り、夕方になるとオーディンの肩に止まり、人間界と神界について見聞きしたことを必ず報告しに戻ってきます。

そして足元の大狼は一匹ゲリ「貪慾」(Geri)、もう一匹はフレキ「暴食」(Freki)を表し、オーディンの戦いに協力しました。 オーディンはミョード(蜂蜜酒)しか飲まなかったので、差し出された肉はすべてこの二匹の狼に投げ与えました。

知恵の井戸

知恵の井戸は、巨人の住むヨートゥヘイムにあり、世界の樹(ユグドラシル)の2番目の根の下にあります。 知恵の井戸は、宇宙の賢者である巨人ミーミルの知恵の源であり、これを飲めば知恵がつくと言われています。 また、ミーミルは北欧の祖先神の一人で、巨人の祖先であるイメルから生まれた神です。

ミーミルの井戸の水は知識と知恵に満ちており、天地全体、九つの世界で起こるすべてのことを知り、すべてがこの透明な水の中に融合されています。 だから、ミーミルの井戸水を飲む者は、神であれ、エルフであれ、巨人であれ、小人であれ、人間であれ、知識と知恵を持つようになります。

しかし、年老いた巨人ミーミルは知恵の井戸を一歩も離れず守り、どんな神もどんな巨人も近づけさせないため、 地上でも天上でも、ミーミルの知恵の水を口にしたことのある生き物は、老巨人ミーミル自身を除いてはいませんでした。 

毎日、輝く夕陽が泉の水面を詩的に照らすと、ミーミル老人は立派な角の杯で知恵水を汲み、一人でゆっくり味わっていました。 日が経つにつれ、彼は一杯飲むごとに賢くなりました。天地の間で起こったこと、起こっていること、これから起ころうとしていることをすべて知っているのです。

(翻訳・天野 秀)