神秘的なブロセリアンドの森(下)

魔術師マーリン

魔術師マーリンは「ヴォーティガーンの塔」の物語で登場します。当時7歳だったマーリンは、イングランドのヴォーティガーン王に塔の下に白と赤の二頭のドラゴンが眠っていると伝えました。ここでの白いドラゴンはサクソン人を象徴し、赤いドラゴンはイングランド人を象徴しています。二頭のドラゴンの戦いは、現実で両国間の戦争が避けられないことを意味しています。

ヴォーティガーン王の死後、マーリンは後の3世代の王に仕えました。3人の王はアウレリウス王、ユーサー王、そして、最も有名なユーサー王の息子であるアーサー王です。マーリンはアーサー王を幼い頃から、即位するまで保護し、後にアーサー王の預言者、魔術師、軍事顧問を務め、アーサー王の偉大な功績に貢献しました。

マーリンに変身能力があることは知られていますが、子供、老人、女性、小人または動物にも変身できるといわれています。マーリンは咆哮(ほうこう)する海や大地を操り、アーサー王のために城を建て、壁を登って侵攻してきた兵士を城壁から投げ出すこともできました。また彼は未来を予見し、人々の運命を支配することさえできると言われています。

しかし、このような卓越した能力を持っている偉大な魔術師は愚かな過ちを犯しました。彼は湖の妖精・ヴィヴィアンに恋をし、ヴィヴィアンに自分の力の秘密を話したのです。マーリンの弱点を知ったヴィヴィアンは彼に魔法をかけ、オークの木に永遠に閉じ込めました。

地元の人にとって、マーリンは愛の神でもあります。森の中のバロントンの噴水池から伝説のマーリンの墓地まで、恋人たちの愛情を象徴した記念品は至る所にあります。バロントンの噴水池はマーリンが最初にヴィヴィアンと出会った場所だと言われています。2人が恋に落ちた後、マーリンは噴水池にヴィヴィアンのための水晶宮を建てました。マーリンの墓には、恋人たちの愛情を祈るための記念品がたくさん置かれています。

迷いの森

もちろん、ブロセリアンドの森はマーリンの私物ではありません。森が非常に広く、奥まで足を踏み入れた人はごくわずかしかいないため、様々な言い伝えが生まれました。

ある者は多くの神出鬼没の妖精や魔女が住んでいると思い、この森を「迷いの森」と名付け、人々の立ち入りを禁じました。

森の中で目を閉じて、耳を傾けると、通りすがりの妖精の音が聞こえてもおかしくありません。彼女たちはたまに妖精の棒を振りながら、こっそりと旅人たちの横を通り過ぎます。地元の人によると、小さい妖精たちは常に岩や木の後ろに隠れて、静かに我々の世界を見ているそうです。

冬になると妖精たちは、中が空洞になった樹木の幹の中で寝るのが好きで、暖かくなると、再びあちこちを飛び回り、時には人間が住んでいる村に行って、いたずらをすることもあります。

今まで、近くの村で様々な奇妙なことが何度も起こりました。その度に、「妖精たちのいたずらかな」と村人たちは微笑みながらささやき合っています。(完)

(文 李琳/翻訳編集 季千里)