童話の世界を描く挿絵画家:アーサー・ラッカム(下)

挿絵画家の事業

挿絵の歴史を研究しているロックウェル・センター(the Rockwell Center)のコリン・コシーク氏によると、イギリスの印刷業者のカール・ヘンチェルが「Hentschel-Colourtype」という印刷技術を開発しました。この技術はアーサー・ラッカムの作品の色合いをより鮮明に印刷できるといいます。

1905年以降、挿絵入りの本が大量に印刷されるようになってから、編集者ウィリアム・ハイネマンは挿絵画家の挿絵原稿を売り出すチャンスを見つけました。短編小説『リップ・ヴァン・ウィンクル』(Rip Van Winkle)が発行されてから、ラッカムの挿絵原稿はほぼ完売したのです。このような商業モデルは、ラッカムの後の作品の主な販売方法となりました。

ラッカムの挿絵は間もなくして美術作品として評価されました。コシーク氏はロックウェル・センターのホームページでこのように述べています。

「ロンドンの有名なアートギャラリーで、限定版として挿絵の原稿を展示することは、当時の全ての画家にとって有益なことであり、また、その頃から、挿絵の原稿や挿絵入りの本は特別な意味を持つようになった」

例えば、ギフトとして贈ったり、記念品として限定ものをコレクションにしたりなど、挿絵は間もなくして流行の芸術となりました。特にプレミアムや限定版などの挿絵入りの本は、イベントなどの日に子どもに贈るギフトとして大人気でした。

1871年から1919年頃までは挿絵芸術の黄金時代(the Golden Age of Illustration)と言われています。ラッカムもまたその頃にいくつもの傑作を生み出しました。彼の限定版の挿絵は、エドワード時代のイギリスや後にアメリカなどで大きな人気を集めています。

 

ラッカムの自画像。(パブリックドメイン)

 

ラッカムの挿絵は、私たちすべての人の心の中に住む子どもたちをファンタジーの世界へと連れて行くことができます。また、子どもの教育問題に悩まされている家庭にも救いの手を差し伸べています。ラッカムの挿絵は子どもたちをアドベンチャーと摩訶不思議で神秘的な世界へと連れて行くことができ、子どもたちは挿絵を通じて、危険とは何か、ワクワクドキドキとは何か、気を付けるべきことは何かを学ぶこともできます。

(完)

(翻訳編集・天野秀)