絵本で解決、幼児教育の悩み 第4話:子供への新たな理解 感想文指導も苦労いらず

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日本に住むある中国人の母親は、小学二年生の娘が夏休みの課題をいつまで終わらせないことを見かねて、娘を連れて図書館に行くことにしました。そこで偶然出会った絵本に彼女は感銘を受け、それ以来絵本に夢中になり、平凡で不安ばかりだった子育てが素晴らしい方向に向かったのでした。

7歳児童の感嘆

これまでにもお話ししたように、小学二年生の娘は国語が苦手で、読書がとても嫌いでした。しかし、夏休みの宿題である読書感想文を書かなければならないために、なんとか母親と一緒に図書館で借りてきた絵本『ねずみのティモシー』を読み終えました。ねずみパパと5人の子どもの家族の様を描いた物語を読んでいる中で、娘がふと発した一言が母親を非常に驚かせたそうです。

誰もが忙しい毎日を生きる現代社会において、物質的な豊富さは真の幸せをもたらさず、近ごろは孤独や孤立が最大の心理問題になっています。作者は、このような現代を生きる親に、子どもが本当に必要としているのは両親の寄り添いであることを理解して欲しいと願い、その思いを絵本に込めたのです。

しかし本に関する紹介など全く見ていない7歳の娘には、絵本を通して作者が伝えたい主旨や意図など知るはずもありません。ただ何も考えずに絵本を読み進めていただけでしたが、次第にまるで自分が絵本の中の登場人物になったかのように、絵本に引き込まれて行ったのでした。

ねずみの子どもたちが次々と問題を起こすようになったところまで読んだ時、子どものために様々なおもちゃを開発するお父さんねずみを見て、7歳の娘はふと感嘆のため息を漏らしました。

「こんなにたくさんのおもちゃを発明して何の意味があると言うの? みんなお父さんと一緒に遊びたいだけなのに…」

絵本のもつ大きな作用

娘のこの言葉を聞いた母親は、非常に驚いたと言います。何も考えていないと思っていた娘は、予想外にも物語の内容を理解し、さらに書中で描かれていたねずみ兄弟たちの感情に大きな共感を表したのです。それはまさに、彼女が現実社会で抱いていた感情そのものだったのでしょう。

実のところ、多くの子どもが親に見せる異常な感情と対抗心は、親と共に時間を過ごしたい、親の寄り添いが欲しいという子どもたちの満たされない欲求が原因であることがほとんどです。しかし、多くの親は仕事が忙しく子どもを気にかけてあげられず、おもちゃやゲーム機に頼ってしまっており、コミュニケーションや寄り添いが欠けることで子どもがどれほど孤独で悲しい思いをするかに気づいていないのが実情です。

もちろん子どもたちも幼いうちは、自分がなぜ怒っているのか、はっきりと自覚することが難しいこともよくあります。子どもが両親に遊んでほしいと頼んでも断られてばかりいると、やがて子どもは心を閉ざし、自分の希望や考えを言わないようになってしまいます。心の中では落ち込んだり、モヤモヤした感情が残ってしまい、どう対処したらよいかわからずに、次第にイライラしたり、人に当たったりするようになってしまうのです。

絵本はこうした子どもたちが、心の中に埋もれていた真の願望や落ち込んでいた本当の理由をはっきりさせ、自分にとって本当に必要なものが何であるかに気づかせてくれます。また、自分がもつ願望や葛藤は他の子も同じであり、本の中から得られる共感は子どもにとって大きな慰めになるはずです。親と一緒にいたいのは自分だけでなく、そう考えるのは普通なのだということがわかれば、子どものもつ孤独感や不安は大きく緩和されるでしょう。

同時に、親は子どもと一緒に絵本を読むことで、子どもの心理——落ち込みや反抗する本当の原因が理解できるようになります。絵本を通してお互いにコミュニケーションが生まれ、そこから話題が切り開かれることもあります。この親子も例外ではなく、母親はこれまで知らなかった子どものことを新たに知るきっかけになったと言います。

娘への新たな理解  感想文指導も苦労いらず

娘の感嘆の声に驚いた母親は、不思議に思い娘に尋ねました。「これらのおもちゃ好きじゃないの?欲しいと思わないの?」

すると娘はこう答えたのです。「そんなことないけど、パパの方が好きだから、パパに一緒に遊んで欲しい」。

母親は戸惑いながらも、5人のねずみ兄弟が本当に娘の言うように、父親が発明ばかりして自分たちを構ってくれないことに怒って悪さをしていたのか真相が気になり、続きを読み進めるよう娘を促しました。果たしてねずみパパは最終的に子どもたちの思いを理解して、子どもたちを喜ばせることができたのでしょうか。

読み進めてみると、まさに娘が言うように、ねずみパパのティモシーはどうしても子どもたちが喜ぶ方法がわからず、直接聞いてみることにしました。その結果、子どもたちは本当にただ父親に一緒に遊んで欲しいと願っていただけだったのです。それを知ったティモシーは仕事を中断して、子どもたちの願いを叶えてあげることにしました。父親に遊んでもらえたねずみ兄弟たちはようやく幸せな気持ちになり、悪さをしなくなりました。

娘が話した通りに物語が進み、結末を迎えたことに母親は非常に驚きました。絵本がこれほどまでに大きな効果を発揮するとは想像もしておらず、ましてや7歳の娘がこれほどはっきりと自分の意見が言えるとは思ってもいなかったそうです。やがて母親は、娘が愚かなのではなく、自分が子どものことを真に理解していなかったことに気づきました。もともと本を読むのが苦手で、国語の成績が良くない娘にとって、読書感想文を書くのはとても難しいことのように感じ、親としてもどのように指導すればいいのか全くアイディアが湧かなかったのですが、自分の考えをスラスラと言う娘を見て、不安はすぐに吹き飛びました。自分の考えを持ち、尚且つそれを明確に表現できる子どもであれば、最終的には必ず文章に表すことができるようになります。

そこで母親は娘にこうアドバイスしました。

「読書感想文というのは、さっき自分が話していたみたいに、絵本を読んで自分が思ったこと、感じたことを言葉にすればいいんだよ。どうしてこの本が好きなのか、ねずみパパのことをどう思ったか、どうしてねずみ兄弟の気持ちが理解できたのか、その理由を思った通りに書いたらいいんだよ」。

「もし自分がお父さんに対して同じように思うなら、自分の例も書いてごらん。他の子どもたちも同じような悩みを持っているかもしれないから、皆に読んでもらおう」。

母親の励ましと指導のもと、娘は無事に宿題を終えることができ、さらに母親が自分を認めて理解してくれたことにとても喜びました。この体験が、本を読むのが嫌いだった娘の思わぬ変化につながるとは思ってもみませんでしたが、これ以降娘はたびたび母親と一緒に読書を楽しむようになりました。母親と読書をすることで、母が自分を理解し、自分がしっかりと考えを持っている子だと認識させることができると感じ、さらに母の自分を見る目が驚きや肯定、励ましに変わってきたことがわかって嬉しかったのだと言います。

以後、娘は思ったことがあると何でも母親に話すようになり、母親も子どもの言うことを真剣に聞くようになりました。子どもと過ごす毎日において、かつて自分が知っていた世界とはまったく異なる世界が広がるようになったと母親は話します。では、絵本を通して母娘関係にどのような変化が起こったのか、次話で深掘りしていきます。

つづく

文・劉如/翻訳編集・牧村光莉