絵本で解決、幼児教育の悩み 第2話:絵本との偶然の出会い

奇跡が詰まった絵本の魅力を紹介するこの連載は、ある中国人の母親が、偶然図書館で絵本を発見したことから誕生しました。彼女は小学二年生の娘が夏休みの宿題をなかなか終わらせないことを見かねて、本を借りるために娘を連れて図書館に行きました。そこで出会った絵本が、不安と焦りばかりだった彼女の子育てに、想像もしなかった大きな変化をもたらしたのです。 

7年間の育児  絵本を読むも本当に理解していない

中国出身のこの母親は、夫に付き添って来日したものの、日本の教育については全く知識がなく、子どもの本といえば、世界的に有名な童話神話など、絵がきれいで、親が子どもに買い与える古典的な本という印象が強かったそうです。これらの本が、子どもの教育に大きく役立つと思っておらず、ましてや自分の人生観に大きな変化をもたらすとは少したりとも思っていませんでした。

そのため、子どもが生まれてから育児をしていく中で、もちろん絵本を買って子どもと一緒に読むことはありましたが、絵本で表現されている深い意味を理解することはできなかったと言います。それは、これらの絵本が子どもにとってどんな意味を持つのか、何のために作られたのかを理解できず、ただ子どもの楽しみのために、あるいは自分の任務をこなすために読んでいたに過ぎなかったからです。絵本は子どもの想像力を育むなどの言葉はよく聞いていたものの、真に心の底から信じていたわけではありませんでした。教育に熱心な親の多くは、アンデルセンの童話など有名な絵本をたくさん子どもに買い与えますが、それが子どもに大きな効果を与えていると感じることもなく、また自分が読んでいても面白さを感じられないために、子供と一緒に過ごすためでなければ、手に取ることはなかったときっと思うでしょう。しかしそれは、子どもに共感し、一緒に絵本の世界に入り、絵本の楽しさや効果を味わおうとしていないからです。

彼女は、いつの日か自分がこれらの本に夢中になり、子ども以上に積極的に読み、愛することになるとは全く思っていませんでした。さらに、絵本を知るようになってから、もともと勉強嫌いで鈍いと思っていた娘が、ある特定の分野においては、天才的なアイディアを発揮できるということに気付いたと言います。絵本は、彼女が想像もしていなかったような不思議な変化をもたらしたのでした。

日本の絵本は、有名な童話や神話に限らず、多くがあらゆる年齢層や心理状態に適したものであり、子どもの成長のあらゆる悩みを解決するために、そして子どもがたくさんの知識を得て視野を広げ、よりよく成長するために、様々な工夫を凝らして作られたものです。絵本を通して、親が子どもを理解できるように、子どもが親を理解できるようにと、一冊一冊に深い意味が込められています。彼女は、その意味を本当に理解した時、絵本がまるで知恵と喜びの宝庫であるように見えたと言います。こうした変化のきっかけは、娘から与えられた難題——読書感想文を書く手助けをすることが始まりでした。

娘の宿題目当てが一転  奇跡の出会い

ある日、彼女は小学二年生の娘に、夏休みの宿題で読書感想文を書かないといけないけれど、書き方がわからないと尋ねられました。国語が苦手な娘に対して、彼女はあらゆる言葉や知恵を用いて説明しましたが、一向に理解してもらえませんでした。彼女の娘は国語が得意ではなく、中でも漢字の読み書きが特に苦手で、テストではいつも平均点に届かなかったと言います。授業は集中できず、3~4歳向けの絵本以外、基本的に本を読むのを好まず、小学校低学年向けの本でさえも字が多いと、読み聞かせをして10分も経たないうちに飽きてしまうそうです。そのため彼女は、自分の娘が他の子より成長が遅れているのだと思っていました。また、身体が弱く、強く当たると泣いてしまうため、あまり強くは言えず、たとえ強制的に何かをやらせたとしても、亀のような速度でしか進まないので、娘に対しては為す術がなく、ほとんど諦めていたも同然でした。

それでも、夏休みの宿題を終わらせなければならないため、彼女は仕方なく娘を連れて図書館に行きました。子ども向けの絵本でもいいから、文字が少ない本を選んで、読書感想文を書いてもらおうと考えたと言います。しかし、そうはしたものの、心の中では、こんな単純な絵本のどこに読書感想文を書けるような深い意味合いが含まれているのだろうと思っていました。さらに、どうしても仕方がない場合は、自分が絵本から理解したことを子どもに伝え、読書感想文を書くのを手助けしようと考えました。

結果的に、彼女はその図書館で奇跡的な出会いを果たしました。彼女は一体どのような絵本に出会って、絵本に対する認識が一変し、面白くないと思っていた児童書に夢中になったのでしょうか。そして、それが娘にどのような変化をもたらしたのでしょうか。第3話では、その答えを明らかにします。

つづく

文・劉如/翻訳編集・牧村光莉