思い出せないのは物忘れ? それとも認知症? 脳の退化を逆転させる6つの方法(2)

(前稿より続く)
 

脳の老化を防止する、脳の健康のための6つの秘訣

現代病の多くは低年齢化しており、認知症の発症年齢も下がっています。ですから、中高年の方でも軽く見てはいけません。林志豪氏によると、認知症の原因の40%は調整可能であり、若い頃から予防する必要があるとのことです。

認知症の原因となる危険因子は生活の中にたくさんあり、脳にダメージを与え、脳の働きを鈍らせ、記憶力に影響を及ぼします。物忘れを改善し、認知症を予防する方法はいくつかあります。

1.生涯学習・社会活動

多くの人は定年退職後、人生の価値を失ったかのように日々を過ごし、認知症のリスクが高まっていく傾向にあります。

生涯学習の姿勢や、考え・学ぶ習慣を維持することは、脳の活性化につながります。林志豪氏は、人は趣味を持ち、社会的な活動を行う事で、自分の人生に価値を見出すことができると提案しています。

また、認知症になった場合、学習を継続し、活動などに参加することは、病気の進行を遅らせることにもつながります。神経科医のダニエル・ギブス博士がその一例です。

 

高齢者にとって、生涯学習や社会的な活動を続けることは、身体的・精神的な健康にとって良いことです。(Shutterstock)

 

アルツハイマー病の専門医だったギブス博士は、10年前に自分もアルツハイマー病であることが分かりました。この衝撃的な事実により、彼は引退を余儀なくされましたが、簡単には病気に屈しませんでした。ギブス博士は、現在も医学会の活動や、自身が被験者となっている認知症の臨床研究などに積極的に取り組んでいます。同時に、回顧録の執筆も行っています。

林志豪氏は、一般的に認知症は発症から終息まで約10〜12年かかり、平均して4年ごとに1段階悪化し、10年後には非常に深刻な状態になると指摘しています。しかしギブス博士は、毎年無理をしてでも論文を書き、セミナーに参加し続けた結果、10年経った今でも、言葉の劣化がある程度で、自分の身の回りのことは自分でしています。

2.運動

1週間に150分の有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせが理想的だと林志豪氏は推奨しています。

2020年に『スポーツ・健康科学誌』(Journal of Sport and Health Science)に発表された研究によると、有酸素運動と筋力トレーニングが認知症の予防と治療に利用できることが分かりました。中程度の強度の有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせて、1週間のうちできるだけ多くの曜日に、45分以上行うと、高齢者の認知能力を維持するのに役立ちます。

βアミロイド蛋白の蓄積は、認知症の危険因子として知られています。運動はβアミロイド蛋白の変換を調節して脳の炎症を改善し、脳由来神経栄養因子の合成と放出を促進することで、脳の血流を改善することもできます。また、運動が加齢に伴う記憶力の低下を防ぐ可能性についても言及されています。

ギブス博士は以前のメディアインタビューで、定期的な有酸素運動が初期のアルツハイマー病の進行を最大50%遅らせることができるという圧倒的な証拠があると指摘しています。

運動には他にも、ストレスを和らげ、気分を整え、うつや不安を軽減する効果があります。

(つづく)

(翻訳・香原咲)

蘇冠米