1日数個で「永遠の若さ」 中国で古くから伝わる「紅棗(ナツメ)」の利用法

中国原産の紅棗(ナツメ)は、古くから重要な食材だといわれ、強力な生薬として扱われてきました。 紅棗は中国で最も人気のある薬用食品の一つであるだけでなく、現在では世界中で見られ、健康のための滋養品、体の機能を高めるものとして利用されています。

紅棗は中国で4000年以上も前から珍重されており、特別な日に友人や家族に贈られることが多いです。 では、紅棗には一体どんな成分が含まれていて、人気を博しているのでしょうか。 現代の研究では、紅棗は脳の保護に役立ち、がん細胞を自滅させる重要な成分を含んでいることが明らかになっています。

がん細胞を死滅させる天然化合物の一種を含む

2018年に《食品と功能》(Food and Function)誌に発表された実験室研究では、中国の紅棗から分離したトリテルペノイドが、人間の肺がん、乳がん、前立腺がんの細胞にアポトーシス(個体をより良い状態に保つために積極的に引き起こされるプログラム細胞死)を誘導し、自滅させることが明らかになりました。

トリテルペノイドは、植物が病原菌や草食動物から身を守るために使う天然化合物で、アジア諸国では薬用や免疫力アップのために多く使われています。

また、トリテルペノイドには抗炎症作用があり、熱を下げ、肝臓障害を防ぎ、心臓機能を向上させ、痛みを軽減し、体を落ち着かせ回復させる作用があります。

研究の結果、その中の4種類のトリテルペノイドはがん細胞の生存率を低下させ、残りの3種類はがん細胞を自滅させることが分かりました。

また、2016年に《イブン・スィーナー植物医学誌》(Avicenna Journal of Phytomedicine)に発表された研究では、中国の紅棗の子宮頸がんと乳がんに対する抗がん作用を調査しています。その結果、紅棗の抽出物が、がん細胞の増殖抑制、がん細胞の転移抑制、アポトーシスを引き起こすなどの抗がん作用を示すことを発見しました。

2011年に《民族薬理学雑誌》(Journal of Ethnopharmacology)に掲載された研究では、乳がん細胞に対する紅棗の抗がん作用を検証しています。この研究では、紅棗の抽出物が乳がん細胞の増殖を抑制し、アポトーシスを引き起こす効果があると結論付けています。 興味深いことに、実験室では、これらの抽出物は健康な組織に対して悪影響を及ぼしませんでした。今回の研究結果から、漢方薬の乳がん治療において、紅棗の抽出物の使用が有望であると判断しました。

ストレスを和らげ、心を落ち着かせ、脳を保護する

科学的な研究により、紅棗は脳にもよく、ストレスを軽減する効果があることが分かっています。

2017年に《エビデンスに基づく補完・代替医療》に発表された研究によると、紅棗には脳を保護する作用があることがわかりました。 研究者らは、紅棗には神経毒のストレスから神経細胞を保護する、神経組織の成長を促進する、記憶と学習を促進するなど、神経保護作用があることを発見しました。 研究者らは、紅棗は神経障害の予防や治療のためのサプリメント開発の候補になりうると結論づけました。

これらの結果は、東方医学が何千年も前から知っていた、紅棗が心を落ち着かせ、身体的ストレスを和らげ、脳に恩恵を与えることを立証するものです。

紅棗の取り入れ方

では、どのように紅棗を食事に取り入れると、健康効果を享受できるのでしょうか。 中国の古い言い伝えによると、1日に数個の紅棗を食べるだけで、「永遠の若さ」を手に入れることができるのだそうです。

紅棗は、中近東のブラウンデーツよりも抗酸化物質が多く、カロリーは低く、ビタミンCは32倍も含まれています。また、ブラウンデーツの半分の糖分で、ヘルシーなおやつとして、料理やお菓子作りの天然甘味料として優れています。

紅棗は生でも乾燥させても食べることができます。 新鮮なのは、甘いリンゴに似た風味があります。 紅棗干しの方が人気があり、入手しやすいです。ブラウンデーツのような味わいですが、より繊細な風味があります。

ブラウンデーツ3個で54キロカロリー、糖質12グラム、中国紅棗3個で28キロカロリー、糖質はわずか6グラムです。紅棗には、リン、カルシウム、鉄、マンガン、カリウムも含まれています。

オートミールやヨーグルト、かき氷にひと握り入れたり、紅茶に使ったりするのもおすすめです。天然甘味料としてデザートに加えてみてください。また、伝統的には、甘みと健康効果を期待して、スープやご飯に加えられることが多いようです。

女性にオススメー酸棗仁(さんそうにん)スープ

漢方では、紅棗は「大棗(たいそう)」と呼ばれ、数千年前から心身を落ち着かせ、睡眠を改善するために使われてきました。

紅棗はその甘みにより、消化器官を強化し、調和させ、万能の滋養品だと思われています。エネルギーを増加させ、血液にも効果があります。

また、神経系を落ち着かせる効果もあるため、不安や睡眠障害にも優れた効果を発揮します。

酸棗仁スープと呼ばれる紅棗を含む漢方薬は、古くから不眠症の治療、精神の鎮静、認知機能の改善に漢方医学で用いられてきました。2011年に《エビデンスに基づく補完・代替医療》に掲載された研究では、閉経前後の女性の不眠症を調査しています。酸棗仁スープを4週間摂取したところ、女性の睡眠の質と持続時間、日中の運動能力が有意に改善されることが実証されました。 

中国紅棗は、豊富なビタミンCを含み、低カロリーで糖分も少なく、さらに脳の保護やガン予防の効果があるため、飲食に最適な食材と言えます。また、睡眠、ストレス、不安などの問題がある場合にも適しています。ドライフルーツとして、ほとんどの中国食料品店や健康食品店、またオンラインショップで販売されています。

針灸医師、ウェブサイト「漢方生活」創始者。