春の海

「春の海」は、尺八と箏の二重奏であり、日本の有名な音楽家、宮城道雄(1894~1956)の代表作の一つです。筆者がこのを初めて見たのはフルートの楽譜で、音階の関係もあるのかもしれませんが、和風な曲だと感じました。

宮城道雄は日本の作曲家で演奏家でもあります。幼少期に失明してしまいましたが、失明が転機ともなり、箏と尺八を学びました。その後、楽器を教えて生計を立てていました。宮城道雄はタイトルの「春の海」や数々の名曲を生み出し、特に「春の海」は代表曲になっています。目は見えませんが耳はとても敏感で、瀬戸内海を船で巡った時に、波の音や鳥の声などを加えて、この名曲が作られました。昭和7年に来日した外国人ヴァイオリン奏者がこの曲を聴いて、とりわけ気に入り、箏とヴァイオリンの曲に編曲し、道雄との合奏がなされ、世界的な評価を得ることになったのです。

「春の海」は室内楽風の曲で、西洋音楽のA-B-Aの三部形式で創作されています。第一部は速度がゆっくりで穏やかな春の海を表現し、尺八が美しい主旋律、箏が伴奏を奏でます。そして箏が船に打ち寄せる波の音を奏で、尺八がカモメの鳴き声を真似しています。第二部は速くなり、箏が舟を漕ぐリズムを合わせて舟歌の旋律を奏で、尺八が春の輝きを象徴するメロディーを奏でています。第三部は第一部の繰り返しで、箏と尺八の交錯する演奏で和やかに幕を閉じます。

初めてこの曲を聴く人は正月の雰囲気を感じられず、正月を祝う曲として使われる理由が分からないかもしれませんが、日本では誰もが知っている正月の定番曲になっているのです。

尺八は中国から伝わってきたもので、長さが一尺八寸であることから尺八と名付けられました。尺八の吹き口は特別な斜めで、他の楽器を演奏する人でも、その吹き方には簡単に慣れることができません。特に吹奏する方式は他の木管楽器と全く異なり、顔を上下に振って、ビブラートをかけることができます。あまりにもシンプルな楽器のため、表現できることは少ないように思えますが、生演奏を聴いたら、奏法によってかなり豊かな表現力があることが分かります。

廖真珮