グラフェンと「食材」を活用したヘルスケアデバイスが開発

最近、イギリスで、グラフェン海藻の材料で作られたヘルスケアデバイス(健康監視機器)が開発された。この機器は、筋肉、呼吸、脈拍、血圧などのデータを記録することができるという。

グラフェンナノ複合材料は、柔軟で電気的に敏感な特性を備えているため、高精度な生体力学およびバイタルサイン測定を実現する。

しかし、多くのグラフェンナノ複合材料は、製造プロセスで化学溶剤を使用する必要があり、これらの溶剤は人体に有害であるため、一部の製品は医療や人体への応用が制約されており、また人体に使用されるグラフェンナノ複合材料は、高感度と低剛性の要件も満たす必要があります。

この目的を達成するために、イギリスのクイーン・メアリー (ロンドン大学)とサセックス大学は、全ての要件を満たすグラフェンナノ複合材料を共同開発した。この材料は、グラフェン、海藻、海塩で構成され、生分解性の特徴を持っている。

この開発は、ミシュランレストランのゼリーカプセルデザートからアイディアを得たもので、茶色いワカメなどの物質にグラフェンを加えて球状化し、内部には液体のグラフェンのコアがあり、固体の海藻グラフェンゲルの層で包み、最終的には、食べられることができ、生分解の可能なカプセルが作り出された。

このカプセルを作るためには、まずグラファイトを長さ約290ナノメートル(nm)、厚さわずか1~6原子層のグラフェンに分離し、アルギン酸ナトリウムをグラフェン懸濁液に混ぜ合わる。

続いて、研究者らは、滴下法を使用して、これらの材料を塩化カルシウムを含む溶液に素早く滴下して凝固させ、その外殻にゲルコーティングの層を含め、最終的に直径約2.5ミリメートルの個々の球形のカプセルを形成した。カプセルの表面は均一で滑らかだ。

カプセルの機械的な性能および導電性能をテストしたところ、研究者らは、カプセルが電気を通すことができ、導電性の強さはカプセルシェル内のグラフェンの量に関連しているものの、大きくは変わらないことを発見した。

さらに、カプセルは異なる圧力を受けると異なる電気抵抗を発生し、圧力が増加すると、電気抵抗も増加する。この現象により、この材料は潜在的なひずみセンサーになる可能性がある。

研究により、これは液体中のナノグラフェンの積層と関連していることが判明し、積層が増え、圧力も高くなり、抵抗が増加する。

逆に、圧力が低くなるほど抵抗が減少し、カプセルの直径サイズとシェルの厚さは抵抗特性に影響を与える。直径が2.5mm未満でシェルの厚さが650µmの場合、抵抗は約2.6MΩとなり、一方、直径が約4.5mmでシェルの厚さが300µmの場合、抵抗は1MΩまで低下する。

これらの特性により、カプセルは圧力に非常に敏感であり、圧縮されたりすると、電気特性が大きく変化し、この事は効率的なひずみセンサーとして使用できることを意味している。

研究者は、様々なサイズやシェルの厚さを持つカプセルを製作し、特殊な基板に配置してカプセル化し、最終的に電子スキン構造を形成した。

この装置を人体に貼り付けて実験した結果、この装置は高感度の診断ツールであるだけでなく、筋肉の動き、呼吸、脈拍の変化を正確に測定し記録できることがわかった。さらに、抵抗の変化を通じて、人体の血圧の変化も測定でき、最初の設計通りであった。

またこの電子スキンは、外部のフィルム層を温水で簡単にクリーニングすれば、内部の銀メタル線とカプセルを簡単に分離し、再利用できるという。

上記の研究成果は、今年の6月末に『先進機能材料』(Advanced Functional Materials)誌で正式に発表された。

ロンドンのクイーン・メアリー大学、材料工学博士ディミトリオス・パパゲオルギウ(Dimitrios Papageorgiou)氏は、同校のニュースサイトに対し、「私たちは料理芸術と最先端のナノテクノロジーの画期的な融合によって海藻グラフェンを作成した。マイクロカプセルの並外れた特性は、ウェアラブルなナノ複合材料も提供する。高精度な健康診断技術を実現し、リサイクル可能で生分解性も備えている」と述べている。
 

吳瑞昌