「孤独感」はパーキンソン病の発症リスクを高める=研究

アルツハイマー病に次いで2番目に多い神経変性疾患であるパーキンソン病は、友人と電話をしたり、人を訪ねたりすることで予防できるのでしょうか?

遺伝や神経毒、頭部外傷がパーキンソン病の発症リスクを高めることは以前から知られていましたが、米医学誌「JAMA Neurology」に発表された新しい研究によると、孤独も発症リスクを高める可能性があるといいます。

研究の著者によれば、神経変性疾患の要因として感情状態が挙げられたのはこれが初めてだといいます。

15年にわたる研究

米フロリダ州立大学の研究者たちは、孤独とパーキンソン病の発症リスクの関連を調べるために、大規模な研究を行いました。彼らは、UKバイオバンクの生物医学データベースと研究資源から、38~73歳までの約50万人の参加者のデータを分析しました。

研究者たちは15年間にわたって参加者の健康調査と状態を追跡し、その間に2800人以上がパーキンソン病を発症しました。

参加者らは「孤独を感じることが多いか?」との問いに回答し、孤独感を自己申告。社会的孤立の度合いは、友人や家族の訪問頻度、余暇や社会的活動の頻度、世帯人数によって測定されました。

研究者らは、糖尿病、遺伝、社会・経済的地位、社会的孤立、喫煙、身体活動、肥満度(BMI)など、パーキンソン病の発症リスクに影響するとされるさまざまな要因をコントロールしました。

その結果、年齢や遺伝、性別にかかわらず、孤独はパーキンソン病と大いに関連していました。しかし、糖尿病などの慢性疾患を考慮すると、その関連性は13.1%減少しました。

50歳未満の参加者を除外した分析でも、この関連性は見られました。孤独とパーキンソン病との関連性は、最初の5年間は見られませんでしたが、その後の10年間で見られるようになりました。

なぜ孤独がパーキンソン病につながるのか?

現在、推定50万人の米国人がパーキンソン病を患っています。しかし、早期の診断が難しい疾患であるため、実際の数はもっと多いとされています。

これまでの研究で、孤独は認知機能の低下、認知症、アルツハイマー病のリスク、そして高血圧や肥満などの深刻な身体的問題と関連があることは判明しています。

孤独は、精神的な不調から生じる炎症や代謝経路を通じてパーキンソン病のリスクを高める可能性があると、新しい研究の著者らは示唆しています。

ストレスによる炎症は、正常な生体運動制御に不可欠なドーパミンを生産する脳神経細胞を損傷し、パーキンソン病の発症につながる可能性があるのです。

社会的相互作用が脳に及ぼす影響も大きいようです。社交は脳を刺激し、神経可塑性(学習や経験に応じて脳のつながりを変化させたり再編成したりする能力)を促進します。交流することで、神経細胞を成長させる化学物質が放出され、パーキンソン病のような神経変性を防ぐ可能性があります。

孤独や社会的孤立は、パーキンソン病のもう一つの要因である「座りがちな生活」にもつながります。

エポックタイムズの取材に応じたニューヨークのノースウェル・スタテンアイランド大学病院で老年精神医学を専門とするゼーラ・アリ医師は「孤独は喫煙や肥満と同様の相関関係がある」と指摘しました。

「孤独は、うつ病、アルコール依存症、認知症のリスクを高めます。さらに身体的健康にも悪影響を及ぼし、心血管疾患、メタボリックシンドローム、冠動脈疾患、脳卒中のリスクをも高めます」

孤独の蔓延

 米公衆衛生局長官のビベック・マーシー氏は5月、「孤独と孤立の蔓延」について勧告しました。彼は「孤独と孤立が健康に重大な影響を及ぼすことを考えると、私たちは、タバコ、肥満、薬物使用障害などの重要な公衆衛生問題を優先するのと同じように、社会的なつながりを築くことを優先しなければならない」と報道声明で述べました。

マーシー氏の報告書は、特に若者の社会的つながりの減少を指摘しています。成人の約半数が孤独であり、それにより何十億もの医療費がかかっているとのことです。

ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校 精神医学・行動健康学科主任のアニッサ・アビ=ダルガム博士は「社会的孤立と孤独を混同しないように注意すべきです」と、エポックタイムズに語りました。

「孤独感とは、人々がどれだけつながりを感じたいと思っているかということと、どれだけつながりを感じているかということ、つまり現実と希望との間にある不一致のようなものです」

「しかし孤立が必ずしも孤独を意味するわけではありません。人は集団の中にいても孤独を感じることがあります。それが本当にストレスなのです。それとは反対に孤立している人の中には、つながりを感じている人もいます。孤独感は主観的なものです」

孤独とパーキンソン病の関係は複雑で多面的です。これらの関連性についてはさらなる研究が必要ですが、社会的交流と活動は脳の健康を維持し、パーキンソン病のリスクを軽減するのに役立つかもしれません。

エポックタイムズの健康・ヘルス関連記者。