マグネシウムは海苔・ワカメ、亜鉛は牡蠣・小麦 体に良くても食べすぎには気を付けよう!

記憶力の低下は、脳内のマグネシウムと亜鉛の欠乏が原因

 

1905年には、75歳以下でうつ病を発症する米国人はわずか1%でしたが、1995年には、24歳前にうつ病を発症する米国人が6%に増加しました。50年の間に、食品の製造方法は根本的に変化しました。食品産業が穀物を精製して白い小麦粉や白いパンを製造するようになり、焼き菓子のミネラル含有量が減少したため、全粒穀物(精白などの処理で、糠となる果皮、種皮、胚、胚乳表層部といった部位を除去していない穀物やその製品)の消費量は劇的に減りました。

例えば、1905年当時、人々はパンから1日に約400mgの食用マグネシウムを摂取していました。しかし1955年には、マグネシウムをほとんど含まない白パンを食べるのが当たり前になりました。マグネシウムは、一般の人々のうつ病の増加につながるとは考えにくいかもしれませんが、脳内でマグネシウムが果たしている役割を見てみれば、なぜ重要なのかがわかるでしょう。

マグネシウムは「精神安定剤」の元祖とも呼ばれています。何十年もの間、ストレスや不安に対する家庭薬として使われてきました。実際、ビクトリア朝時代の多くの水治療センターでは、当時の医師の処方に従って、治療用の入浴や飲用として、マグネシウムを豊富に含む水が提供されていました。現代科学によれば、マグネシウムは脳内の多くの化学経路にとって重要であり、セロトニンなどの重要な神経伝達物質の生成や、カルシウムの脳への興奮作用のバランスをとる上で重要な役割を果たしています。

マグネシウムは、多くのビタミンB群を活性型に変換するために必要です。ビタミンBは脳の健康に不可欠です。例えば、多くのビタミンは食品中に活性型として存在していませんか、細胞に吸収されるためにわずかな化学変化を起こす必要があります。

マグネシウムに富む食品( YuliaFurman / PIXTA)

動物実験によると、マグネシウムは私たちの学習と記憶を助け、長期的には記憶力を保護するのです。一部の学者はマグネシウムの摂取量(毛髪中のマグネシウム量で測定)が学業成績に関連すると主張しているくらいです。また、マグネシウムはコルチゾールなどのストレスホルモンの分泌を抑制し、血液脳関門(脳には、血液から細胞や病原体等が簡単に入らないようにする仕組み)に作用して、コルチゾールが脳に入るのを防ぐことも判明しました。マグネシウムはストレスを受けると体外に排出されます。私たちの祖先は、天然の肉や魚介類をたくさん使った食事からマグネシウムを補給していました。今日では、マグネシウムはほとんど食品から摂取されず、ペットボトルや水道水にも微量にしか含まれてません。成人の1日のマグネシウム推奨摂取量は、米国で320~420mg、日本で260~300mgとされていますが、私たちが1日に370mg以上のマグネシウムを摂取することは難しいです。マグネシウムを多く含む食品は、アーモンド、ほうれん草、カシューナッツ、ピーナッツ、豆乳、黒豆、インゲン豆、バナナ、レーズン、玄米などが挙げられます。ただし、マグネシウム含有量は、栽培されている土壌にどれだけのマグネシウムが含まれているかによって決められます。

亜鉛細胞の会話に必要

「スーパー栄養素」という言葉を使うのはためらわれますが、亜鉛はそれに値します。亜鉛は強力な抗酸化物質で、フリーラジカル(人の体を酸化させ、錆びさせるもの)の攻撃からDNAを守ります。 亜鉛は、脳を含む細胞を生き生きとさせ、抗炎症作用によって老化のプロセスを遅らせることができます。ちなみに、男性の読者の皆さんは、亜鉛は勃起を維持するためにも不可欠です。50年以上前、科学者たちは脳内に亜鉛が大量に存在することを発見し、現在では神経細胞の小胞、つまり重要な神経伝達物質(ニューロン同士の会話を可能にする分子)を含む小さな「袋」に亜鉛が特に集中していることがわかりました。

面白いことに、脳内で最も高濃度の亜鉛が、海馬(学習と記憶の中枢)の神経細胞で発見されました。マサチューセッツ工科大学とデューク大学の科学者たちは、亜鉛の役割を観察しました。 彼らは、亜鉛をタンパク質に結合させ、移動可能な「遊離」亜鉛の量を減らすと、海馬の2つの重要な細胞グループ間のコミュニケーションが妨げられることを発見しました。遊離亜鉛がなくなると、細胞は会話しなくなります。

動物実験では、亜鉛の欠乏が神経の再生に影響を与え、脳細胞の死亡率を増加させ、学習や記憶の障害につながることが証明されています。亜鉛についてこれまでに分かっていることから、、これは驚くべきことではありません。 しかし、アルツハイマー病脳における亜鉛レベルの低下を報告した研究がある一方で、他の研究では、アルツハイマー病とプラーク形成を促進する異常に高い亜鉛含量との間に明確な関連があるとされています。この矛盾を解くには、もっと研究が必要です。つまり、亜鉛をたくさん摂取することが必ずしも良いわけではなく、適切な量が大切だということです。

欧米では亜鉛欠乏症が蔓延しており、成人の約20%が食事から十分な亜鉛を摂取できておらず、公衆衛生上の懸念が高まっています。亜鉛は体内に貯蔵できないので、毎日、女性で約9mg、男性で約11mgの亜鉛を摂る必要があります。かき、カニ、ロブスター、牛肉、鶏肉は特に亜鉛が豊富で、定期的に食べていれば亜鉛不足になることはないでしょう。ベジタリアンの食事には亜鉛はほとんど含まれておらず、豆類、ひよこ豆、ナッツ類、かぼちゃの種などにごく少量含まれています(その量は土壌によって異なります)。 しかし、医師から亜鉛欠乏症と診断されていない限り、亜鉛のサプリメントは勧められません。