木蘭、従軍す

フア・ムーラン花木蘭)は、高齢の父親に代わって男装して場に挑んだ女性で、人気のある中国伝説のヒロインです。古代中国では、『木蘭詞』として記録されています。以来、映画や演劇で長年にわたり題材としてとりあげられてきました。神韻の『ムーラン従軍』もその一例です。

ムーランの生誕年は定かではありませんが、南北朝時代(386-589年)のころの話だと思われています。当時、北方の遊牧民族が中国を侵略したため、朝廷は各世帯から一人、男性を前線に送り出すよう命令しました。ムーランの弟がまだ幼かったため、年老いた父親が出陣するはめになりました。

父の健康を危惧し、ムーラン自身が男装し、父の身代わりになることにしました。12年にわたり卓越した手腕で軍を率い、無数の勝利を収めました。戦後、皇帝が栄誉を授け、ムーランを高官に抜擢しましたが、ムーランは辞退し、 年老いた両親の世話をすることを望み、家に戻りました。

仲間の兵士がムーランの村を訪れて初めて、ムーランが女性であることを知ったのでした。

木蘭詞

止まらない溜め息
ムーランは扉の前で手を振っている

機織りの音は聞こえない
聞こえるのは哀れな娘の溜め息だけ

何を思っているのか
誰が心の中にいるのか、尋ねておくれ

誰も心の中にはいないよ
そんなことは何も思っていないよ

昨夜、軍書を見たんだ
朝廷は多くの男性を徴兵している

軍書十二巻の全てには
父の名が書き込まれている

父の息子はまだ幼い
ムーランには兄はいない

鞍のついたを手に入れ、
父の代わりに戦場に行くことにした

東の市場で馬を買い、
西の市場で鞍を買う

(南市買轡頭,北市買長鞭 —英語は逆になっているようです)
南の市場でくつわを買い、
北の市場で長い鞭を買う

朝焼けとともに娘は父と母に別れを告げ、
日没には黄河の土手で一夜を明かす

両親の呼び声は耳に届かず、
川のながれる音だけが聞こえる

朝焼けとともに黄河を出て、
日没には黒山頭に到着する

両親の呼び声は耳に届かず、
燕山の馬の鳴き声だけが聞こえる

万里を歩き戦場に向かう
飛ぶがごときに山々を越える

冷たい風が、見張りの鐘の音を運ぶ
寒々とした光が鉄の鎧を照らし出す

数百もの戦で、将軍たちは亡くなった
最強の兵士は10年後に帰還した

朝廷の座に就く天子、
つまり皇帝に迎えられ

皇帝は十二の巻物に武功を記録し、
数千にのぼる報償を賜る

皇帝はムーランに何をのぞむか尋ねる
ムーランは大臣の肩書きには関心がない

ムーランは千里を駆け抜け、
故郷に戻ることを願う

ムーランの帰還を聞きつけた父母は、
互いに支え合いながら、町の入り口までかけつけた

ムーランの帰還を聞きつけた姉は、
身支度をして扉のそばで待っていた

ムーランの帰還を聞きつけた弟は、
包丁を磨いで、 豚と羊の馳走を用意した

「東側の部屋のドアを開けて。私は西側の部屋のいすに腰掛けるから。
戦場の服は脱ぎ、昔の衣に身をまとうから」

窓に向かって雲のような柔らかい髪を整える
鏡を見ながら黄色の花をつける

門のところで戦友に会う
戦友は驚きを隠せない

12年の戦の中で、
ムーランが女性だったとは知る由もなかった

雄のウサギは蹴ったり撲ったりが好き
雌のウサギはうっとりと見つめるのが好き

でもウサギが肩を並べて走っていたら、
雄雌の見分けはつかないでしょう

 

――「神韻芸術団」(日本語ホームページ)より転載

https://ja.shenyunperformingarts.org/explore/view/article/e/nD–M73ASvA/.html