食器洗いスポンジは、食べ物のカスが付着しやすいことから、汚いイメージを持っている方も多いでしょう。しかし、最新の研究によると、それだけではなく、スポンジの構造自体が細菌の繁殖に最適な環境を提供していることが明らかになりました。その繁殖能力は、なんと研究室のシャーレよりも優れているのです。
米デューク大学(Duke University)の研究チームは、遺伝子編集技術を用いて、80種類の大腸菌株を変化させ、それぞれ異なる色の光を発する性質を持たせました。その後、菌を様々な構造が違う容器で培養し、繁殖の様子を観察しました。
実験では、6つのパイプで構成される容器や、最大1500ものの小さなパイプで構成された容器などで菌の培養を試みましたが、生存そして繁殖できた菌は2種類しかなく、望ましい結果を得られませんでした。しかし、食器洗いスポンジのような構造を試したところ、菌の繁殖が最も活発に行われたことが判明しました。
デューク大学の生物医学工学教授である尤令衝(Lingchong You)氏は、研究の主要メンバーとして次のように説明しています。
「細かく分割された構造の空間では、細菌は他の菌株と共生せざるを得ず、その結果、繁殖が制限されてしまいます。一方で、広い空間ばかりの構造では、細菌は他の菌株の影響を受けやすく、単独で生存しようとする菌にとっては、生存や繁殖が難しくなります。そのため、空間の広さが均一ではないスポンジ状の構造体は、細菌全体の繁殖に最も適した環境となるのです」
尤氏は「研究結果から、スポンジこそ、簡単に細菌の繁殖効率を高める構造体であることがわかりました。これが、スポンジが汚れやすい理由でもあります。スポンジの内部構造は、細菌の繁殖に最も理想的な環境を提供しているのです」と述べています。
細菌は複雑性をもつ生物群です。違う細菌と共生することによって成長するものもあれば、単独での生存を好むものもあります。自然界の場合、土壌がぴったりの例となります。広さがさまざまな穴や隙間があることで、「社交的」な細菌も「孤独」な細菌も、それぞれの性格に相応しい繁殖空間を見つけることができるのです。
研究結果は、2月10日付の科学誌『Nature Chemical Biology』に発表されました。
(翻訳編集 正道 勇)
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