今年の自然界のエネルギー配分では、乙巳(きのとみ)年の1年間は、「金」が弱く、「木」が強くなっています。木が強くなると風のエネルギーも強くなり、一年を通じて風が影響しやすくなります。
人の体では「肺」が金に属しますが、今年は自然界からの金のサポートが弱いため、肺の働きが低下しやすくなります。その結果、肝(=木)のエネルギーが強くなりすぎて、肺に負担をかけ、肺に熱がこもりやすくなります。
このような状態では、次のような症状が出やすくなります:
- 口や鼻、のどの乾燥
- 浅い睡眠
- 肌のかゆみや乾燥
- 便秘
- ニキビなど
気候の変化とは、陰陽五行のエネルギーが移り変わることに他なりません。
春夏の「木・火」は陽の気、秋冬の「金・水」は陰の気、「土」はその中間に位置します。
現在、地球上では春(木)から夏(火)へと移り変わる時期ですが、宇宙全体でも今年は「木の気」が主役の年です。木は火を生み、火は熱をもたらすため、肺にとってはまるで火にあぶられるような状況になります(過剰な熱の影響を受けやすくなります)。
このような時期には、肺の熱を冷ます、肺を潤す、腎を補って肝火を鎮めるといった養生法が非常に重要となります。そこで活躍するのが、黒と白のきくらげです。
黒色は腎に、白色は肺に入る
中医学の「五色入五臓」理論において、黒色は腎に、白色は肺に入るとされています。黒色は五行で水に属し、精を蔵する役割を果たします。
白色は金に属し、主に下行を司ります(陽気を下へと降ろす働きがあり、これが行われないと陽気は心肺や頭部に停滞し、頭痛やめまい、喉の乾き、咳、目の乾燥、眼の充血、不眠や便秘を引き起こします)。
黒きくらげは黒く、なめらかな質感を持ち、体を冷やしすぎず穏やかに潤す性質があります。血の巡りを促し、腎の働きを助け、腸を整えて老廃物の排出を助けます。これは中医学でいう「腎」は体内の水分や生命力を蓄える臓器であり、黒い食材はそのサポートに適しています。
一方、白きくらげは白く、柔らかな質感で、ほんのり甘く淡白な味わいと、やや体を冷ます性質を持っています。形も肺の葉のように見えることから、肺をうるおし、のどの乾きや咳をやわらげる効果があるとされます。体が乾燥しがちな人や、のぼせ・熱っぽさが気になる人に特におすすめです。
この黒と白のきくらげは、腎と肺に対応しており、春から夏にかけての「肝心の陽気を調和させ、肺腎を補養する」良薬となります。
次に、黒白きくらげを主材とした簡単な薬膳レシピを2品紹介します。軽くて低脂肪、吸収が良く、特に春から夏にかけて、気が躁し火が強く、陰虚内熱の方々の日常的な養生にぴったりです。
季節の変わり目に かんたん薬膳レシピ2品
黒きくらげとゴボウのカリフラワー和え

適した体質:
腎の弱りからくる冷えや便秘、イライラや肌のくすみ、体内に熱や湿気がたまりやすい体質の方
材料(2人分):
- 干し黒木耳 10g(戻した後約50g)
- ゴボウ 1/2本(約80g)
- カリフラワー 100g(小房に分ける)
- 醤油 大さじ1.5
- お酢 大さじ1
- みりんまたは蜂蜜 小さじ1
- ごま油 小さじ1
- 黒ごま 少々
作り方:
- 黒きくらげを戻し、洗って細切りにし、沸騰したお湯で20秒茹でる。
- ゴボウはささがきにし、酢水で渋みを取った後、1〜2分茹でる。
- カリフラワー を小房に分け、茹でてから冷水で冷まします。
- すべての材料を混ぜ、調味料を加えて和え、黒ごまをふりかける。
食療効果:
- 黒きくらげ
腎を養い、便通を促進し、血液を活性化します。
- ゴボウ
のどにこもる熱を取り、気分や体の巡りをすっきりさせてくれます。
- カリフラワー
肝を清め、火を散らし、胃を守り腸を潤します。
この3つの食材は、春夏の養生にぴったりな冷菜で、シャキシャキとした歯ごたえと、ほんのり香ばしい風味が特徴です。さっぱりとした味わいで、火が強まりやすい体にやさしく働きかけます。
白きくらげと干し柿の豆乳煮

適した体質:
のどや肌が乾きやすく、空咳が出たり、口内炎ができやすい方
材料(2人分):
- 乾燥白きくらげ 10g(戻した後約50g)
- 干し柿 2個
- 無糖豆乳 300ml
- クコの実 1つまみ(お好みで)
- 蜂蜜 小さじ1(冷めてから加える)
作り方:
- 白きくらげを戻し、小さく切って、冷水で20分間煮る。
- 干し柿と豆乳を加え、弱火でさらに10分間煮る。
- 最後にクコの実を加え、火を止めて少し冷まし、蜂蜜を加える。
食療効果:
- 白きくらげ
肺を潤し、陰を養います。
- 干し柿
乾燥を潤し、胃を養います。
- 豆乳
腸を潤し、消化を助けます。
春夏の乾燥した気候で、火が上がりやすい体質に最適で、デザートや昼の軽食として食べると、喉の乾燥や痛みを和らげます。
まとめ
黒白の2つのきくらげは、それぞれ「潤す」と「補う」の働きを持つ、天然の食養生コンビです。春から夏へと季節が移り変わる時期には、体の内側から外へとエネルギーが発散され、外は乾燥と暑さ、内は陰の不足による不調が特に現れやすくなります。
黒は腎を養い、白は肺を潤します。春から夏への移行期には、肝(木)の勢いを整え、火の過剰を抑えることが大切。陰の力で陽を支えるこの食養生こそが、五臓を整え、季節に合った健康的な暮らしにつながります。
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