ときどき、心がある考えやアイデアにとらわれて、なかなか手放せなくなることがあります。自分では気づいていなくても、そうした状態が続いている人もいます。
心が何かを手放せずにいるサインには、次のようなものがあります:
- 口論をいつまでも引きずる。
- いつも自分が正しいと思いたがる。
- 会話を何度も頭の中で繰り返し、心の中で言い争ってしまう。
- 誰かにされた嫌なことを思い出して悶々とする。
- 恨みを持ち続けてしまう。
- 物事が思い通りにいかないとイライラする。
- 周りの人が、同じ話題に対する自分の愚痴や不満に疲れてしまう。
- 過去を悔やみ、「あのときやり直せたら」とよく思う。
- 自分の過去の行動を許せないでいる。
たまに執着してしまうのは自然なことですが、まったく手放せない状態が続くと、心はだんだんと硬くなってしまいます。
執着は、人間関係や今この瞬間に集中する力、そして幸せを感じる心にも影響します。
もちろん、執着することが全て悪いわけではありません。それが自分を守る力になったり、行動を起こす原動力になることもあります。ですが、より柔軟でしなやかな心を持ちたいなら、どこかで思考を手放すことが必要です。
では、どうすれば手放せるのでしょうか?
なぜ心は執着するのか
私たちの心がなぜ執着してしまうのか、その理由を一緒に考えてみましょう。
それは、「心があなたを幸せにしたくないから」や「手放す力がないから」執着しているわけではありません。
心は自然に「物事が自分の望むようになってほしい」と願うものです。つまり、自分が好ましいと感じる状態を保ちたいという気持ちが、執着を生んでいるのです。
では、なぜ私たちはそんなに執着してしまうのでしょうか? それは、「物事が思い通りにならないと、自分はもう大丈夫じゃなくなる」とどこかで恐れているからです。
たとえば:
- 議論で自分が間違っていたとき、「周りからバカにされるのでは」と不安になるかもしれません。
- 誰かの批判を素直に受け入れられないのは、「自分は良い人じゃないと思われる」「そう見られるかもしれない」と恐れているからかもしれません。
- 恨みを手放せないのは、「許すことで相手に踏みにじられ、尊重されなくなるのでは」と不安になるからかもしれません。
- 物事が思い通りに進まないとイライラするのは、「コントロールを失って怖い状況になるのでは」と感じているからかもしれません。
こういった恐れ、思い当たることはありませんか? 多くの場合、それは「自分は本当に大丈夫なのだろうか」という根深い不安が根底にあるのです。
手放す方法
私たちの心が執着する理由――つまり「恐れ」を理解することが、手放すための第一歩になります。
まず、「どんな理由があっても、自分は大丈夫じゃないかもしれない」という恐れがあることを認めましょう。これは誰にでもある、ごく自然な感情です。
次に、こんな風に問いかけてみてください。「この恐れがあるとき、『自分は大丈夫だ』と感じるには、何が必要なんだろう?」
おそらく最初に思い浮かぶのは、「物事が自分の思い通りになること!」かもしれません。これが、執着の根本的な仕組みです。
でも、もし物事が思い通りにいかなくても、自分は大丈夫だとしたら?
もし、どんな結果になっても「自分は大丈夫だ」と信じられるとしたら?
少し想像してみましょう。たとえ自分が間違っていたとしても、人に悪く思われたとしても、恥をかいたとしても、物事がうまくいかなかったとしても――
「それでも自分は大丈夫だ」と思えるなら。
そんなとき、今の自分を支えるために本当に必要なものは何でしょうか?
私にとっては、深い呼吸、少しの「今この瞬間」への意識、そしてほんの少しの愛情です。
それだけで、物事がどうであるかに執着する必要がなくなっていきます。
手放す練習方法
ここでは、心の執着をどう実際に手放していくか、その手順を紹介します。
1.自分の心が執着していることに気づく
これは、イライラや口論、嫌な出来事を引きずる感覚、あるいは体や心のこわばりとして表れることがあります。気づくだけでも、大きな一歩です。
2.立ち止まり、恐れを認める
一息ついて、「大丈夫じゃないかもしれない」という恐れが自分を執着させていることに気づいてみましょう。そして、その恐れが自分を苦しめていることを受け止めます。ただその感情に気づき、呼吸し、少しの優しさを自分に向けてみてください。
3.「私はいつでも大丈夫」と思い出す
「自分が正しい」「傷つけられた」「思い通りにいった」などは、自分が大丈夫であるための条件ではないと、自分に優しく思い出させてあげましょう。どんな状況でも、自分は大丈夫――その信頼を少しずつ育てていきます。
4.そして、手放す
深呼吸をして、「もしかしたら自分が間違っているかもしれない」と認めてみましょう。相手にも善意があったのかもしれないと認めましょう。物事が自分の思い通りである必要はないと受け入れてみてください。そして、相手を、あるいは自分自身を許してみること。そのとき、心がどれほどやわらかく、開かれた状態になるか、感じてみましょう。
このプロセスは、決して簡単とは言えないかもしれません。でも、それで大丈夫。私たちは「うまくやること」に執着しなくていいのです。ただ、試してみましょう。好奇心を持って、何が起こるか観察してみてください。
そして、もし心を手放し、少しでも柔軟になれたなら――
そのときに感じるかもしれない「心の開放感」に気づいてください。新しい視点が、あなたを待っています。
(翻訳編集 井田千景)
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