糖尿病と診断されたばかりの頃は、体型がまだ普通か、むしろやや太めの人も少なくありません。しかし、時間が経つにつれて、特に数年が過ぎると、徐々に痩せていく人が多くなり、中には急激に痩せて顔色が黄色くなり、元気もなくなるケースも見られます。
ある人はこんな疑問を持ちます:「血糖を厳しく管理しすぎて、栄養までなくなってるのでは?」
実は、中医学の観点から見ると、このように長く糖尿病を患い「食べても痩せる」状態は、単に血糖管理の問題だけでなく、「脾胃(消化器系)の虚弱」と「気血の両方が不足している」ことが原因と考えられます。
長患いは脾を傷つけ、気血が不足する
中医学では「脾は後天の本、気血を生む源」と言われます。つまり、脾胃は体の“食物貯蔵庫”であり、“栄養変換工場”のようなもの。食べたものがエネルギーや血液(気血)に変わるかどうかは、脾胃の働きにかかっています。
糖尿病は中医学では「消渇(しょうかつ)症」に分類されます。長期間の高血糖状態は、体の水分を消耗し、正気(体のエネルギー)を傷つけてしまいます。その結果、脾胃の機能も低下してしまうのです。脾が虚弱になると、食べ物をうまく消化・吸収できなくなり、いくら良い物を食べても栄養にならず、どんどん痩せて、ますます体力がなくなっていきます。
さらに、一部の糖尿病患者は血糖を抑えるために、冷たくて淡白なものばかり食べがちです。たとえばサラダ、冷たい牛乳、冷たい果物や豆腐など。これらは「陰寒」に偏った食材で、寒さに弱い脾胃を守る視点が欠けていると、脾胃をさらに冷やしてしまいます。脾胃は「ご飯を炊く釜」のようなものです。火が入っていなければ、熱が生まれず、どれだけたくさんの食材を入れても、うまく煮ること(=消化・吸収すること)ができないのです。
2つの食養生レシピ ――脾を元気にしながら血糖もコントロール
夏は湿気が多く、だるくなりやすい季節です。加えて、糖尿病の人は陰虚(潤い不足)・内熱(体内の熱)・脾虚(脾の弱り)といった体質傾向があるため、養生には一層の配慮が必要です。
過度に栄養をつけるのもダメ、冷たい物を摂りすぎるのもNG。ポイントは「脾胃を温かく養う」「気血を補う」こと、さらに「血糖値を上げず」「食欲をそそるさっぱり感」も大切です。
ここでは、中医学の理論と日本の食習慣を融合した、夏の糖尿病ケアにぴったりのレシピを2品ご紹介します。
① 山芋と鶏肉と昆布のスープ
――脾を補い、気を養う。栄養はしっかり、でも重たくない

おすすめタイプ:
痩せて疲れやすく、気虚や脾虚がある人、食後に眠くなるタイプの糖尿病患者。
養生の効果:
山芋は脾を補い腎を助け、消化を促進します。鶏肉は気血を補い、脾胃を温めます。昆布は陰を養い、体の乾燥を和らげ、余分な熱を取り除く効果があります。暑さで消耗した気血のバランスを整えるのに最適な組み合わせです。鶏肉との組み合わせは、ひとつが脾胃を温めて養い、もうひとつが過剰な熱や気血の偏りを整えるという、陰陽バランスをとる理想的なコンビです。また、これらの食材は血糖値を大きく変動させにくく、鶏肉には脂肪の少ない鶏むね肉を使えば、夏のさっぱりとした滋養食としても食べやすく、とてもおすすめです。
材料(1人分):
- 鶏むね肉(または鶏もも肉)…100g
- 山芋…80g
- 昆布…5cm角の1枚
- 生姜…2枚
- 塩…少々
作り方:
- 鶏肉を一口大に切り、さっと茹でて臭みを取る。
- 山芋は皮をむき、食べやすい乱切りにする。
- 昆布はあらかじめ水に戻し、鶏肉と生姜と一緒に弱火で30分煮る。
- 山芋を加えてさらに10分煮る。仕上げに塩で味を調える。
② 雑穀ご飯の豆腐納豆かけ
――さっぱりしながら脾を助け、湿気を取り除く

おすすめタイプ:
痩せていて軟便気味、舌苔が白くベタつき、脾の弱さと湿気が強い糖尿病体質の人。
養生の効果:
納豆は脾を元気にし、湿気を取り除き、腎と肝を助けて気血のバランスを整えます。豆腐は熱を冷ましながら脾を助け、肺を潤して気を補う作用があります。雑穀は脾を健やかにし湿を排出する効果があり、血糖値の上昇も穏やか(低GI)。夏の糖尿病ケアにぴったりの一品です。
材料(1人分):
- 雑穀ご飯(玄米+大麦+もちきび など)…80g
- 絹ごし豆腐…80g
- 納豆…40g(1パック)
- 紫蘇または小ねぎ…少々
(豆腐の冷やす性質を中和し、脾胃の冷えを取り除き、脾胃の陽気を補って、消化機能を高めます) - 醤油…少々
作り方:
- 雑穀ご飯を炊き、粗熱を取る(温かすぎない程度)。
- 豆腐をサイコロ状に切る。納豆はよくかき混ぜて粘りを出す。
- 納豆に豆腐と醤油を混ぜ、ご飯にかける。
- 刻んだ小ねぎまたは紫蘇をトッピングして完成。
結びに
糖尿病で痩せてきたからといって、ただ高カロリーなものを食べればいいというわけではありません。本当に必要なのは、「脾胃を整え、食べた物をきちんと気血(エネルギーと栄養)に変える力を取り戻すこと」です。
食材を正しく選び、体質に合った食べ方をすることで、体が元気になり、結果的に血糖値の安定にもつながります。
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