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定期的な筋力トレーニングがもたらす8つの健康効果

80歳までに筋肉量は最大50%失われますが、取り戻すことができます。
必携シリーズ  第 9 話

年を重ねて活動量が減ると、体には目立ちにくいものの重要な変化が起こります。筋肉量が減り、代謝が落ち、体脂肪がつきやすくなります。80歳までに、骨格筋の量と機能の30~50%を失う人もいます。

しかし、筋力トレーニングはこの低下を大きく遅らせ、体組成を改善できます。

筋力トレーニングが体に与える影響

筋力トレーニングは、レジスタンストレーニングとも呼ばれ、ダンベルやバンド、自分の体重による負荷に逆らって体を動かし、筋力と除脂肪量を増やす運動です。

筋力トレーニングは筋肉を疲れさせるだけでなく、神経系、筋肉系、エネルギー系、ホルモン系に連鎖反応を引き起こすと、米サンディエゴで筋力トレーニングを専門とするフィットネスコーチ、マルガリータ・セヴェルナヤ氏はエポックタイムズに語りました。この連鎖反応を理解すると、なぜ最初は筋力の伸びが速く、筋肉の増大には時間がかかるのかが分かります。

すべては神経系から始まります。

何かを持ち上げようと決めると、脳が筋肉に信号を送ると同時に、神経系が筋肉、関節、腱からその動きの情報を受け取ります。大きな力が必要なほど、神経系は多くの運動単位(神経細胞と、それが制御する筋線維のまとまり)を動員できます。

こうした神経の適応は、トレーニングを始めて最初の数週間で、はっきり強くなったと感じられる理由の説明になります。

神経から信号を受けると、筋線維は収縮し、エネルギーとしてアデノシン三リン酸(ATP)を使います。短時間で強度の高いセットでは、無酸素のエネルギー供給系への依存が大きくなりますが、有酸素代謝が完全に止まるわけではなく、すべての系統が同時に、割合を変えて働いています。

筋細胞は張力を感知し、それをタンパク質合成の引き金となる生化学的な信号に変換します。

同時に、交感神経も活性化します。心拍数と呼吸が速くなり、血液が働いている筋肉に集められ、グリコーゲン(余分なブドウ糖)や脂肪の形で蓄えられていたエネルギーが動員されます。アドレナリン、ノルエピネフリン、コルチゾール、インスリン、テストステロン、成長ホルモンなど、一連のホルモンも関わります。

本当の成長はジムを出たあとに起こります。

運動は筋タンパク質の合成を促しますが、体がエネルギー収支を取り戻し、筋組織を修復して作り直すのは回復期です。慣れない運動や、いつもよりきつい運動のあとには「微細損傷」が起こることがありますが、損傷が多いほど筋肉が伸びるわけではありません。ひどい損傷は、成果を高めることなく回復時間を延ばすだけです。十分なタンパク質とエネルギー、睡眠、回復があれば、筋肉の大きさと強さは数週間から数カ月かけて増えていきます。

筋力トレーニングと比べると、有酸素運動は、持続的な運動中に心臓と肺が酸素を供給する能力を高めます。ボディビルディングは、筋力トレーニングを主な手段とし、筋肉をつける時期、体型を維持する時期、脂肪を落とす時期という明確な段階に沿った、計画的な栄養管理を組み合わせます。
 

筋力トレーニングの効果

筋力トレーニングには、次のような効果があります。

1. 筋肉の強化

2025年のメタ分析で、筋力トレーニングが筋力を有意に高め、筋肉の厚みを増やすことが分かりました。ピークトルク(最大の回転力)と筋肉の神経活性化も改善しており、トレーニングで強くなる理由の説明になります。

筋力トレーニングで得られるのは、強さだけではありません。筋力、持久力、筋肉の引き締まりが高まり、日常の動作が楽になって、疲れにくくなります。

2. 寿命の延伸

定期的な筋力トレーニングは、死亡リスクの低下と関連することが示されてきました。6月の研究では、週に90~119分の筋力トレーニングをしていた成人は、レジスタンストレーニングをしていなかった人に比べ、全死因による死亡リスクが13%、心血管疾患による死亡リスクが19%、神経疾患による死亡リスクが27%低いことが分かりました。

年齢を重ねるにつれて、筋力トレーニングは、自立した生活と移動に必要な筋肉量、柔軟性、バランスを保つのにも役立ちます。

3. 体組成と代謝の改善

筋力トレーニングは、除脂肪量を増やすか維持することで、筋肉と脂肪の比率を改善します。筋組織は、維持するだけでもエネルギーを消費するため、筋肉が多いほど安静時代謝率は高くなります。

レジスタンストレーニングの研究をまとめた2012年のレビューは、10週間のトレーニングが、除脂肪体重の平均約1.4kgの増加、安静時代謝率の7%の上昇、脂肪量の約1.8kgの減少と関連していたと報告しました。

4. 骨の強化

レジスタンストレーニング中に筋肉が骨を引っ張るたびに、その機械的な刺激が骨を作る過程を促します。これが、骨密度と骨の強さを維持または高める適応を引き起こし、加齢による骨量の減少を食い止めるのに役立ちます。ウォーキングやランニングなど、体重がかかる他の運動と組み合わせれば、筋力トレーニングは骨量の減少や骨粗しょう症、骨折の予防にも役立つ可能性があります。

とくに骨密度が低下しやすい閉経後の女性700人近くを含む17件の研究を対象にした2025年のメタ分析で、レジスタンストレーニングが骨密度を有意に改善することが分かりました。著者らはまた、週3回のより強度の高いトレーニングで、一部の部位でより大きな効果がみられたとしています。少なくとも48週間続いた介入の70%超で、腰椎、大腿骨頸部、股関節全体、転子部などの部位に、より大きな効果との関連がありました。

5. 慢性疾患のリスク低減

定期的な筋力トレーニングは、次のようないくつかの主要な慢性疾患の予防と管理に役立つ可能性があります。

  • アルツハイマー病:高齢者900人超を対象にした研究で、筋力が高いほどアルツハイマー病と軽度認知障害のリスクが低いことが分かりました。平均3.6年の追跡期間中、研究者が標準化した筋力の総合指標が1単位上がるごとに、アルツハイマー病を発症するリスクが約43%低いという関連がありました。観察研究のため、筋力が高いこと(または筋力トレーニングそのもの)がアルツハイマー病を防ぐと証明するものではありません。
     
  • 2型糖尿病:筋力トレーニングは、内臓脂肪を減らし、ヘモグロビンA1c(長期の血糖値の指標)を下げ、グルコーストランスポーターの利用しやすさを高め、インスリン感受性を改善する可能性があります。
     
  • 心血管疾患:筋力トレーニングは、安静時の血圧を下げ、悪玉コレステロールと中性脂肪を減らし、善玉コレステロールを増やすことで、心血管の健康を支える可能性があります。
     
  • 肥満:過体重または肥満の成人2,500人超を含む65件の研究を対象にした2022年のメタ分析で、レジスタンスを用いた運動が、脂肪量を平均約1.6kg減らし、除脂肪量を約0.8kg増やすのに役立ったことが分かりました。
     
  • 慢性腰痛:慢性腰痛のある参加者400人超を含む10件の研究を対象にした3月のメタ分析で、レジスタンストレーニングが痛みの強さと機能障害を有意に改善したことが分かりました。
     
  • 関節炎:筋力トレーニングは、関節を支えて安定させる筋肉や腱などの組織を強くすることで、けがのリスクを減らすのにも役立つ可能性があります。その結果、変形性関節症のある人では、関節の安定性が増し、痛みが和らぎ、機能が改善することがあります。

6. メンタルヘルスと睡眠の改善

心と体のつながりは、「運動をすると気分が良くなる」というだけにとどまりません。

レジスタンストレーニングは、神経化学的な信号や、神経のつながりの成長と健康を支えるタンパク質「脳由来神経栄養因子」の値など、脳の機能に直接影響を及ぼす可能性があります。脳の可塑性と健全な神経機能を支えることで、気分の改善につながる可能性があります。

若者400人近くを含む2024年のメタ分析で、レジスタンストレーニングをしなかった対照群と比べ、レジスタンストレーニングによってうつ症状と不安症状の両方が有意に減ったことが分かりました。筋力トレーニングは、睡眠の質の向上や不眠症状の軽減とも関連づけられています。筋肉の修復の多くは回復中や睡眠中に行われるため、睡眠の改善が、ここまでに挙げた健康効果の多くを支えている可能性があります。

7. 免疫機能の向上

30件の介入研究を対象にした2022年の系統的総説で、レジスタンス運動が、若い人でも高齢者でも、免疫細胞の機能を示すいくつかの指標に影響を与えることが分かりました。1回の運動では免疫活動に短期的な変化が生じ、定期的なトレーニングは、抗酸化防御や好中球の活動を高め、炎症の調節に役立つ可能性があります。

骨格筋は、運動中にマイオカイン(臓器と免疫系の間の連絡を調整する化学メッセンジャー)を放出し、筋肉と免疫細胞の両方が使うアミノ酸であるグルタミンを蓄え、血液とリンパの循環を助けて免疫細胞を全身に行き渡らせることで、免疫の健康を支えています。これらの働きによって免疫活動が調節され、免疫細胞が全身に届けられます。筋肉量を維持し、体を動かし続けることの大切さがうかがえます。

8. がん治療からの回復の促進

研究によると、がん手術の前に計画的な運動を行うことで、一部の患者では手術に向けた体の準備が整い、術後の合併症が減る可能性があります。こうしたプログラムは、有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせ、栄養面や心理面のサポートを含むこともあります。筋肉量が少ないことや、筋肉量の減少が続くことは、多くのがん患者の集団で、治療への耐性の低下、合併症の増加、生存率の低下と関連していますが、その関係はがんの種類や治療によって異なります。

プレハビリテーション(運動、栄養、生活習慣の見直しによって、手術前に心身の準備を整えること)は、患者が手術のストレスに耐える力を高め、早い回復と入院期間の短縮につながる可能性があります。プログラムには、呼吸運動、体力・筋力トレーニング、栄養の最適化、手術前の禁煙・禁酒が含まれることがあります。

大腸手術を予定している60歳以上の高リスクの成人57人を対象にした2022年の無作為化試験では、3週間の有酸素運動とレジスタンス運動のプログラムに割り当てられた人の術後合併症は42.9%で、通常のケアを受けた人の72.4%を下回りました。
 

筋力トレーニングの基本種目

バランスの取れた筋力プログラムは、際限なく種目を並べるのではなく、いくつかの基本的な動作パターンを軸に組み立てます。

トレーニングが初めての人は、資格を持つフィットネスの専門家に相談するとよいでしょう。持病がある場合や、安全に運動できるか不安な場合は、医師に相談してください。

トレーニングは毎回、5~10分の動的ウォームアップか、早歩きなどの軽い有酸素運動から始めましょう。

まず自重で行う種目で正しいフォームを身につけてから、フリーウェイトやレジスタンスバンド、ウェイトマシンに進むとよいでしょう。目安として、正しいフォームで8~12回できて、最後の数回がきついと感じる重さや負荷を選びます。

基本となる種目には、次のものがあります。

  • スクワット系:スクワットやランジは、脚と股関節を強くし、下半身の安定性を高めます。
     
  • ヒンジ系:デッドリフトやヒップスラストは、股関節を伸ばす動きを重視し、臀筋、ハムストリングス、腰を鍛えます。
     
  • プッシュ系:ベンチプレス、オーバーヘッドプレス、腕立て伏せは、胸、肩、上腕三頭筋を鍛えます。
     
  • プル系:ローイングや懸垂は、背中、肩、上腕二頭筋を強くし、姿勢の改善を促します。
     
  • キャリー系:ファーマーズキャリーは、握力、体幹の安定性、全身の機能的な強さを高めます。
     
  • 体幹・ブレーシング系:プランクや荷重キャリーは、腹部と体幹の筋肉を強くし、脊柱の安定を助け、運動中も日常動作でもバランスを改善します。

トレーニングのコツ

安全に鍛え、トレーニングの効果を最大限に引き出すために、次のコツを覚えておきましょう。

  • 重さよりフォームを優先しましょう。呼吸は一定に保ち、持ち上げている間は息を止めないでください。
     
  • 種目が楽になってきたら、重さや回数、セット数を少しずつ増やしましょう。これは「漸進的過負荷」と呼ばれ、成果を出し続けるために、トレーニングの負荷を段階的に増やしていく原則です。
     
  • 毎回、軽い運動と穏やかな静的ストレッチを含むクールダウンで締めくくりましょう。
     
  • 同じ筋肉の部位を再び鍛えるまでに、少なくとも丸1日は休ませましょう。
     
  • 鋭い痛みを感じたら中止してください。それは通常の筋肉疲労とは異なります。
     

筋力トレーニングのリスク

筋力トレーニングは一般に衝撃の少ない運動ですが、リスクは種目やトレーニングの方法によって異なります。

ほとんどどんな運動でも起こりうる肉離れや筋肉の断裂、関節の痛みや違和感、使いすぎによるけがに加えて、次のリスクにはとくに注意が必要だと、アイコン・リカバリーセンターの臨床アドバイザー、マリアム・ザカリー医師はエポックタイムズに語りました。

  • 遅発性筋肉痛:鍛えた筋肉に、広い範囲の痛みや、押したときの痛み(圧痛)が出ることがあります。通常はトレーニングの数時間以内に現れ、1~3日後ごろにピークを迎え、体が活動量の増加や新しい刺激に慣れるにつれて徐々に治まります。慣れない運動や、いつもよりきつい運動のあとによくみられる反応で、たいていは自然に治まりますが、筋肉を増やしたり、効果的なトレーニングをしたりするのに、痛みは必須ではありません。
     
  • けがによる痛み:鋭く、特定の場所に出て、次第に悪化することがあり、腫れや炎症、筋力の低下、関節の不安定感、動き方の変化、予想より長引く回復を伴うことがあります。こうしたサインは、痛みを我慢して続けるのではなく、いったん中止して見直すべき時だと示しています。
     
  • 腱障害:負荷に関連した腱の痛みと機能低下が起こることがあり、特定の部位の圧痛やこわばりを伴うことが多くあります。最初の数回は違和感が目立ち、腱が温まると一時的に和らぎますが、その後のセット中やセット後に再び現れることがあります。以前は問題なくこなせていた負荷に耐えにくくなることも、警告のサインになりえます。ザカリー医師は、こうした症状が出たら、痛みを我慢して続けるのではなく、トレーニングの量や強度を調整すべきだと指摘しました。「腱は、あなたの熱意よりもゆっくりしたペースで発達するからです」

筋力トレーニング中のパフォーマンスと安全性を高めるために、特定の用具や衣類を使う人もいます。

「リフティングストラップ、ベルト、スリーブ、リストラップは、状況によっては役立ちますが、誤ったフォームや過度な負荷を補えるものではありません」とザカリー医師は述べました。「ほとんどの場合、着心地のよい服装、足元を支える靴、適切に調整された器具、セーフティバーや資格を持つ補助者の存在が欠かせません」
 

筋力トレーニング中の食事

食事は、運動に必要なエネルギーと、筋肉の修復や成長に必要な栄養素をもたらすことで、筋力トレーニングの効果を最大限に高めるうえで欠かせない役割を果たします。

「何よりもまず、食事は目標と運動の強度に合わせるべきです」とセヴェルナヤ氏は述べました。

タンパク質は、筋肉などの組織を修復し維持するのに必要な材料になります。セヴェルナヤ氏は、1日を通して定期的に摂るのが最もよいと付け加えました。

炭水化物も同じくらい重要です。筋力トレーニング中の主な燃料である筋グリコーゲンの蓄えを補充するためです。ただし、現在の研究では、タンパク質とカロリーの摂取量がすでに十分な場合、必要以上に炭水化物を摂っても、それだけでは筋肉の増大は促されないことが示されています。

脂肪はホルモンの産生を支え、脂溶性ビタミンの吸収を助けます。

三大栄養素の必要量は、体格、エネルギー摂取量、トレーニング量、目標によって異なります。運動をしている人の大半は、体重1kgあたり1日およそ1.4~2.0gのタンパク質で必要量を満たせます。炭水化物と脂肪の摂取量は、エネルギー必要量と全体的な健康を支えるように、一人ひとりに合わせて決めます。

セヴェルナヤ氏は、十分な水分をとることの重要性も強調しました。

「水そのものに脂肪を燃やす働きはありませんが、水分が不足すると、運動を続ける力や集中力、回復に悪影響が出ることがあります」と同氏は述べました。

同氏によると、クレアチン一水和物は、筋力トレーニングで使われるサプリメントの中でも、とくに科学的根拠が豊富なものの1つです。短時間で高強度の運動中に、筋肉がエネルギーをすばやく再生するのを助け、筋力やトレーニング成績の向上を支える可能性があります。一般的な維持量は1日3~5gです。

筋力トレーニングは、筋肉をつけるための手段にとどまらず、強さ、回復力、そして長期的な健康への投資です。完璧に鍛える必要はありません。継続に、良い栄養と十分な回復を組み合わせることが、長続きする成果を生みます。

(医学監修 デマリオ・バッツ医師(MD, MSc))
(翻訳編集 日比野真吾)

健康記事を担当するエポックタイムズ記者。