「どんなアーティストでも一見の価値あり」神韻とは何か=作家レビュー

駅、街中、芸術劇場の周辺など、華人女性ダンサーが舞う神韻の色鮮やかな広告を、あなたも一度は目にしたことがあるかもしれない。いったい、神韻とは、どんな舞台なのかー。

「あなたが作家であろうと、どんな分野のアーティストであっても、様々な芸術指向の持ち主でも、この舞台は一見の価値がある、と私は言っておこう」。芸術作家イヴァン・マンティーク(Evan Mantyk)氏は3月、芸術誌「クラシカル・ポエット」の投稿文でつづっている。

神韻は西遊記や水滸伝、三国志演義、紅楼夢といった古典小説からの一幕を再現しており、悠久の中華の歴史を垣間見ることができる。ショートストーリー仕立てとなる演目には、秦の始皇帝、康熙帝ら権威者の知恵と英断、そして岳飛、韓信、など歴史上の英雄の武勇伝も取り上げる。

マンティーク氏は、子供2人と妻の家族で、3年連続して舞台を楽しんできたという。「私は神韻をとても気に入っている」と文章でつづっている。すべての公演では簡潔な解説がつくため、中国文化に詳しくなくても、楽しむことができるという。

神韻芸術団は2006年、中国共産党体制の迫害から逃れた中国人の芸術家たちが米ニューヨークで結成した。マンティーク氏は「15世紀にオスマン帝国に侵略され、イタリアに逃げたギリシャの知識者が、ルネサンス芸術を文化的な土壌豊かなイタリアで開花させたのと似ている」と指摘する。

いま、神韻の世界巡回公演では世界160都市のなかで米国90都市をめぐり、各地満席や追加公演のムーブメントが起きている。「中国古典文化は再び開花した」と同氏は表現する。

中国古典舞踊とは?

「神韻のなかで、最も輝かしいのは、鍛錬されたダンサーたちの表現力だ」と指摘する。西洋で最も知られたバレエは、400年前、フランスのルイ14世時代に開発された舞踊だ。

しかし中国古典舞踊は、少なくとも3000年以上前の時代に存在した。「あなたは美術館で、古代ギリシャや古代エジプトによる舞踊の壁画や彫刻を想像してほしい。これらは、神韻で披露された一部の古典芸術を垣間見ているに過ぎない」とした。

中国古典舞踊には多様な技術が体系化されている。アクロバティックな回転技、宙返り、ステップ、鍛錬しなければきわめて困難なポージングなど。公式サイトは、現代にみられるダンスのみならず、体操やスポーツの起源の一つでもあると主張している。

ニューヨークの著名劇場リンカーンセンターでは連日満員となり、追加席が設けられた。2018年公演を現地で鑑賞したバレエ・民族舞踊の振付師シンシア・パニアグア(Cynthia Paniagua)さんは「神韻は大好きな舞台。技術、振り付け、歴史観、精神性など、美しさに魅了された」と述べた。

アカデミー賞受賞女優ケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)氏は、神韻2011年シドニー公演後の感想で「信じられないほど美しい…踊りのレベルだけでなく、身体能力や物語が伝えるのパワーも驚くべきものだった」と語った。

メルボルンで2017年に公演を鑑賞した元著名バレリーナ、アソール・ウィロウビー(Athol Willoughby)氏は「まるで魔法のよう、なぜこのように完璧にできるのか。神韻には古典バレエの要素が入っている。しかし、私は現役でも到底なしえない業を次々とこなしていた。彼らの才能には嫉妬する」と述べた。

肥沃な大地を想像させるオリジナル音楽

高山を馬に乗り駆け抜けるチベット族の暮らし、緑豊かな草原の恩恵とともにあるモンゴルの遊牧生活、宮廷で優雅に舞う舞踊家たちー。神韻の演目は、肥沃な中国風土を鑑賞者の目の前に想像させる豊かなオリジナル音楽がある。

 

中華文明の広大なスケールは、二胡、琵琶、銅鑼、木魚といった中国古典楽器と西洋楽器を融合させた専属オーケストラの伴奏で表現される。すべてオリジナル音楽で、毎年の演目で楽曲も一新する。

また、演目には、堅苦しげな古典舞踊でなく、シェークスピアのような、小気味いい喜劇も含まれている。寺の小坊主と修道についての物語は、ユーモアさのなかにも教訓と悟りが示されている。

ロサンゼルス公演を鑑賞した俳優でコメディアンのティム・アレン氏は「ユーモアのセンスは文化を超える。神韻のコメディはひょうきんで楽しめた。中国語がわからなくてもわかる、素晴らしかった」と述べた。

深遠な物語

神伝の人類文化と中華伝統の復興を掲げる神韻芸術団は、信仰心を弾圧する共産党政権では、大陸で公演することができない。世界各地の公演でも、中国当局が大使館や領事館を通じて、公演停止やスポンサー取り下げ要求があったことが、大紀元が入手した各地の関係者の話で分かっている。

こうした中国当局の反応にもかかわらず、堅実にメッセージ性ある舞台を世界中で披露しつづける神韻は、東西文化、言語、年齢を超えて共感を得て、観客たちに感動をもたらしている。「真の中国文化」を目にするため、本土から駆けつけて鑑賞する旅行客もいるという。

結成以来、年次ツアーを展開してきた神韻は現在、一グループあたり100人以上のダンサー、音楽家、技術者からなる5グループで5大陸20カ国150都市以上を巡回するツアーを行っており、公演規模は世界最大と評されている。

また、米ニューヨークのリンカーンセンターからイタリア・ローマのオペラ座、日本の新国立劇場や台湾の国父紀念堂など、世界の名だたる芸術劇場から公演し成功を収めた。

(編集・佐渡道世)