北京当局のサイバー戦争 

2005年10月26日 11時00分
 【大紀元日本10月26日】米国のシンクタンク、極東アジア研究センター統括本 部長・張而平氏はこのほど、東京の外国人記者クラブ、デンバー市主宰の米国西海岸アジア研究協会年会、ニューヨーク州立大学主催のアジア研究会年会の席上で『北京当局のサイバー戦争』を講演した。同講演の内容は、同氏がハーバード大学ケネディスクール大学院で自ら研究したものに基づいている。論述内容は以下の通り。

 「唐の太宗(626-649A.D.)は中国で最も賢明な皇帝として知られており、後継者にその治世について助言しています、『両方の意見を聞いていれば、人は賢明である。一方の意見だけ聞いていると、人は駄目に成る』。もし、中国共産党がこの言葉に従っていたら、中国はもっと情報公開の進んだ社会になっており、少なくとも8億ドルもかけて外部からの情報を封鎖するシステム『金の盾』を構築することもなかったはずです。このシステムはインターネット警察5万人で運用されており、世界第二位で現在1億といわれる中国のインターネット愛好者を監視統制するのが目的です。中国のインターネット人口は年30%増加しており、数年後には7億5千万人に到達することが見込まれています。北京当局は露骨な手を打っているが、政治的かつ社会的な問題で情報とネチズンの両面でその掌握が難しくなってきています」。

1.インターネットと報道に対する検閲

 「毎年5月3日は、国連が『報道の自由』を祝う記念日です。今年のユネスコ・ギジェルモ・カーノ世界報道自由賞は、中国人ジャーナリストの程益中氏が受賞しました。程氏は『南方都市報』の元編集長で、SARSや広州の警察署で大学生(孫志剛氏)が殴られたことを記事にしたことで知られています。彼はこのために2004年3月20日に逮捕されました。彼は5ヶ月間の拘留の後、釈放されましたが、喩貨峰氏と李明英氏の二人の同僚は拘禁を言い渡されました。中国当局は、セネガルのダカールで行われる国連の表彰式に程氏が出席することを許可しませんでした。程氏は『私の心は慰められましたが、同時に沈んでいます。私たちは良識に従っただけなのですが、不幸にも圧力によって高い代償を払うこととなってしまいました』とコメントを寄せました」。

 「現在の中国における報道の自由とは一体どのようなものでしょうか?『国境なき記者団』の指標によると、中国は世界で第138位であり北朝鮮よりわずかに上です。ニューヨークに本部を置く『ジャーナリスト防衛委員会』は、中国は世界で最もジャーナリストを投獄した国として挙げています。2001年から、インターネット記者61名が投獄されています。“風俗誌と違法出版物を追放する”運動の元、中国政府当局で出版物などのガイドライン設定を行っている新聞出版総署が、2004年から2005年の間に新聞・雑誌169件を発行禁止にしました。それらは、中外法制(ISSN1726-4464),中国経済(ISSN1811-2927),金融与科技(ISSN1562-5605NR38-588-98/F3433),現代教学与管理(ISSN1683-9021CN3559/111/02NR),世界医療器械(ISSN1024-6924),中国通信(ISSN1027-8125),維権 (ISSN1811-0452)等です」。

 「外国のメディアも同様です。ニューヨーク・タイムズ北京支局の趙岩氏が拘留されたことによって、北京駐留の外国メディアは北京当局が随時記者を警察に拘留することができることに気付きました。GAPPの最近の発表によると、“中国は定期的に出版秩序を維持するため、法律に基づき違法な外国語出版物を発行禁止とする」。

 「北京大学新聞伝播学院前助教授の焦国標氏は、検閲について率直な意見を述べたために解雇されました。VOAの報道では、同氏は中国の検閲制度を『情報の豚小屋』と評し、中国と外部世界を分かち、中国メディアと中国人民とを分かつ、『臭い石』であるとしました」。

 「最近のゴールアップの調査では、18歳以上の中国人の12パーセント、1億人以上がインターネットを使用したことがあり、中国人ウェブ・サーファー85%が男性、そのうち40%が21-25歳です。携帯電話のユーザーは3億人に達しました。インターネットは中国のこの変遷時期においては両刃の剣になっているようです。当局は経済的な発展と競争のためにインターネットを利用し、知識に基づいた経済を形成しようとしていますが、情報を開放するとウクライナのオレンジ革命のような政治的に良くない結果が起こると正当化しています。オンライン上での討論とメッセージは腐敗した当局を転覆します。カリフォルニア大学バークレー校・中国インターネット専門家の肖強氏によると、2,000年から中国当局は省市700箇所以上にインターネット警察を設け、法と条例37件がインターネットを規制するために施行されています」。

 「米国務省の官僚が公聴会で『2004年も引き続き米政府は2003年の《中国インターネット産業に対する自己規律の公的誓約》に悩み続けるだろう』と証言しました。SINA.COM,SOHU.COM,YAHOOなど、300社以上がこれに署名しました。その誓約とは迷信・風俗に関する情報を拡散しないことです。彼らはまた社会秩序と安定を害するような情報も拡散してはなりません」。

 「最近では、ヤフーの香港現地法人が個人情報を漏洩したために、師涛氏が天安門事件の情報を海外に送信したことで逮捕され禁固刑10年の判決を受けました」。

 「2000年に、中共は『金の盾』というシステムを構築し、中国から海外のサイトへ繋がる6本のラインを監視し始めました。結果、中国人インターネット愛好者たちは、BBC,CNNなどの海外メディアサイト、台湾・香港などのサイトにもアクセスできなくなり、チベット、法輪功、天安門などに関するものは検閲されるようになりました。2003年には、中国のネットカフェ20万箇所の内、約半数がネット警察によって閉鎖され、残りは監視・検閲ソフトをインストールされました。BBCが元で、ネットカフェ4万7,000軒以上が閉鎖を命ぜられました」。

2.中共対ネチズン

 「中国ではあらゆるメディアが国営ですが、情報統制の最近の焦点はインターネットです。在北京・中国社会科学院の郭良氏は2001年、ジャーナリスト防衛委員会に『毛沢東同志は権力には二つのものが必要であると言った。一つは銃で一つはペンである。もしこれに統制を失えば、当局に影響がでる』と述べました」。

 「中共側からすると、インターネットは政権を安定させるために産業を発展させ、知識を伝達し、政治的宣伝を行う道具でなくてはなりません。ネチズンは、しかしながらインターネットを研究、私的な通信、ビジネス・チャンス、自己を表現できる即席の場として利用しがちです。事実、中共はネチズンがアクセスできる情報と発言できる内容を規制しようとしています」。

 「中共の厳格な努力にも係わらず、中国でネチズンが増えるにつれ、インターネットは着実に情報と表現の自由を拡大し続けています。一般大衆からネットに寄せられる意見と感想は、オンラインの社会欄で増大しており新たな社会資本として政治の刷新と社会的な変遷にますます寄与するようになってきています。一方で中共は大衆の傾向を監視するため、サイバー警察を通してインターネットを利用しています。胡均涛総書記は、SARS流行中あちこちのサイトを覗き見ては大衆の心証を評価していました」。

 「胡均涛氏と温家宝氏が2004年秋に中央政局に登場してから、多くの人がより開かれた自由な社会を期待しました。しかし胡均涛総書記が中央政治局を召集して思想・メディア統制を北朝鮮とキューバから学ぶよう指示してからは、失望に変わりました。実際、胡政権はインターネットへの締め付けを強め、率直な知識人に弾圧を開始しました」。

 「同時に、北京当局はライターの一団を雇い多くのペンネームを駆使してインターネットに寄稿し、大衆の意見を扇動しようと目論見ました。これは今春の反日デモの際、国家主義を駆り立てるのに大いに役立ちました」。

 「しかしながら、最近の出来事を見ると、インターネットと携帯電話が中国社会の変遷にますます重要になってきていることが分かります。2003年のSARS危機が良い例です。北京当局はこの致命的な疫病を5ヶ月以上(2002年11月から2003年3月)にも亘って隠蔽しましたが、SARSという言葉はインターネットとSMS(SHORT MESSAGE SERVICE)を通じて中国中を駆け巡り、結局中国当局は事態の深刻さを認めWHOとの共同作業を約束しました」。

 「同様に、日本の安保理入りを阻もうと中共が煽った国家主義は、上海市民がインターネットと携帯電話を使用して反日デモを組織した際には、統制不能に陥りました。当局はデモ隊の主催者たちに漸次締め付けを開始し、反日のウェブ・サイトとチャット・ルームはメーデーの一週間閉鎖され、新たなデモは禁止されました」。

 「社会活動のもう一つの形は、オンライン討論会とチャット・ルームで、幅広い命題(政治的なものを除く)を議論しています。大学キャンパスのチャット(BBS)は、内容が様々なので人気があり、結果2003年3月にはネット警察が統制の必要を感じました。しかしながら、彼らの議論が政治的なものに介入する準備として、新規のチャット・サイトが立ち上げられていました。このようなネット上の“追いかけっこ”で、中国当局はネット・フォーラムを閉鎖するのが難しくなっています。ブロガー数は2003年1,000人前後だったものが2005年には60万人に達しましたが、彼らのネット・フォーラムには海外からの協力が必要です」。

 「中国人ネット・ユーザの多くは、ダイナミック・インターネット・テクノロジー社、ウルトラ・リサーチ・インターネット社等の米国製ソフトを駆使して、中国の検閲システム『金の盾』を掻い潜って、海外の閲覧禁止サイトにアクセスしています。検閲に反対しているのは個人だけでなく中国に駐留している外国企業もそうです。海外のサイトにアクセスできなければビジネスが発展しないことを知っているからです。しかし、これらの外国企業は大陸での利権が損なわれるのを恐れ意見が低調になっています。これは時間が経てば解決されるでしょう」。

3.インターネットと社会的変遷

 「UCLAリチャード・バウム博士の見方では、果たして中国では西洋流の民主主義は短期では進みません。なぜなら、中国の経済開放が中央の政治体制に釣り合っていないためです。中共の内部または上層部において政治的な改革を行うことは、趙紫陽氏のように自己批判を迫られ、結局1989年に天安門事件を見ました。草の根からの圧力は表現できる方法を求めており、インターネットが結局安全で便利なのです」。

 「中国はかつてないほどの経済成長を遂げましたが、農村からの季節労働者少なくとも1億人が職を求めて都市内を放浪し、そのうち1,000万人が都市郊外で失業者の群れに入っています。それらは国営企業が破綻し競争力のある民営企業が台頭した所産です。雇用不安と宗教弾圧によって民衆の間に怨嗟の声が広がっています。外国企業による技術と資本の注入によって、中国は’80年代から’90年代にかけて政治・経済の低迷から救われましたが、政治的な改革がなければ中国は長期的に安定しないでしょう」。

 「検閲にもかかわらず、インターネットでは異文化からの新しい思想を学ぶことができるだけでなく、討論し異なった意見を交換することができます。中国農民7億の不満は当局によって封じられていますが、大衆がこれに興味を示していないというのではありません。例えば、陳桂棣、春桃夫婦が書いた『中国農民調査』は農村の悲惨な状況を暴露したものでしたが、発売から一週間もしないうちに10万冊以上が売り切れました。夫婦は後に名誉毀損で訴えられ、発行差し止めになりましたが、ドイツがこれを表彰したこともあって人気が出ました。それは海外のサイトにも掲載され、結果中国当局は大衆からの圧力によって農民問題に真剣に取り組まなくてはならなくなりました」。

 「中国公安当局によると、暴動、自治領での武装蜂起、集団陳情、集会、デモ行進、打ち壊し、交通の遮断等、社会不安が増大しています。1999年に3万2,000件だったものが、2002年には5万件となり、2003年には5万8,000件になりました。集団抗議行動を組織するために必要な通信手段は携帯電話とインターネットです。2008年の北京五輪が近づいていますが、当局はデモ隊が国際社会の関心を集めるのではないかと懸念しています。オンライン情報に対する当局の締め付けは、国際メディアと『金の盾』に遭遇した人々から強い抗議が出るはずです」。

 「BBCの最近の報道では、『九評共産党』に関するインターネット上のキャンペーンがあります。それは、中国系の独立したメディア『世界大紀元時報』によって去年発表された社説です。これによって共産党の圧制と詐欺が暴露されたため、約5ヶ月間の内に400万人が共産党から脱党しました。それらの中には、前中国共産党中宣部文芸局局長の孟偉哉氏など46人の中共高級官僚もおりました。共産党はすぐに『1.24共産党キャンペーン』を打ち出し、党員に一年半以内に少なくとも40時間、共産党の理論を学習するよう要求しました。ハーバード法科大学院バークマンセンターの報告書によると、『九評』は中国国内で禁止されているウェブ・サイトの筆頭に挙げられています。現在、中国で九評を所持していると罪になり逮捕され収監されます」。

4.結論

 「情報公開は開かれた法治国家でのみ可能です。中国ネチズン1億人の勢力は、当局のサイバー統制に対して静かな戦いを進めています。インターネット・ユーザーは年間30%で急増している為、当局はそれに合わせて規制・統制を増やさなければなりません。学者の多くが指摘しているように、情報操作は共産党の存続にとって不可欠な要素であり、メディアの統制と検閲がなければ共産党は早速に滅んでしまいます。もし中国人民と全世界が共産党の本質に迫り、共産党が人民の損失から利益を得ていることが分かれば、共産党の存在そのものが問われることでしょう。このように、無色透明な通信技術であるインターネットは、グローバリゼーションの時代には社会を変革する有力なものであり、現在では中国の生活全般において静かな革命が始まっています」。

 「唐の太宗は人民を水に譬えました。それは船を浮かせることもできれば、沈めることもできるものです。中国は繁栄しましたが、市民は思想・表現・集会の自由を行使できる情報公開の進んだ社会を求めています。もし中国の指導者が国益を考えて行動し、権威を保持したいのなら、経済成長に見合った待望の政治改革を許容し、人民の声に耳を傾けなければなりません」。
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