【大紀元日本4月10日】パニック症候群になった人なら、思い通りにならない自分の心を知っています。自分の居場所が檻のような場所に、閉じ込められてしまうのです。見知らぬところへ出かけてゆくことが出来ません。
予期恐怖の心に打ち勝てない自分がもどかしく、パニックの予感の嵐を消し去る手立てはどこにもありません。自分の殻に閉じ込もる胡桃のような場所に、避難するしかありません。
『牧神の祝福』はアイルランドの作家ロード・ダンセイニによって、1927年に書かれた物語です。アイルランドは古くヒベルニア(ラテン語)と言われた島国です。国土の大部分は花崗岩=始原の大地におおわれ、豊富な鉛の産出量を誇っています。国土の半分近くが牧草地というお国柄です。
牧神パンはパニックの語源となったギリシャ神話の埋没神です。埋没神というのはお隠れになった神というほどの意味です。キリスト教の伝播によって、アイルランド先住の神々が忘却の彼方に葬り去られました。牧神パンはその一柱(ひとはしら)の神です。
19世紀末アイルランドの田舎町ウオルディングで、この教区を担当する司教をパニックに陥れる事件が発生します。ほどなく牧神パンが奏でるという葦笛を吹く男の子が騒動を引き起こしていることが判明します。
この音色に誘われた田舎町の人々がウオルド=太古の森への郷愁を駆り立てられ、ストーンヘンジ(環状列石)のある場所へ集合します。クライマックスの場面にただ一人立ち向かう司教の手には、なぜか古代の石斧が握られていました。
異教の牧神パンの荒野の呼び声に屈するのか? 物質文明にどっぷりと飲み込まれたアイルランドの始原の森を回復するのか? パニックに陥った迷える子羊たちを救済するために司教が下した決断とは・・・、自らがパニックに陥っていることからの覚醒に他なりませんでした。
パニックから脱出する石斧の一振りを発見できれば、この物語を正確に読んだことになるでしょう。花崗岩と鉛という鉱物がもたらした始原の記憶のファンタジーから、ダンセイニはこの物語を書いたのだと私は信じています。
(そら)
(09/04/10 10:20)
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