中国の農民問題
【大紀元日本12月24日】中国の古典中の古典、詩経を読むと農民の領主に対する怨嗟の声が記されていることは中国古典に親しむ人達にとっては旧知の事実である。例えば碩鼠(領主の貪欲な収奪を呪った農民の声)は今読んでも当時の支配階級の収奪の凄まじさが見て取れる。何も三千年遡らなくても、数知れぬ農民一揆のなかで正史に名を留める大規模な宗教系或は農民主体の暴動のみをとっても枚挙に暇がないのが中国史である。
後世から理想と目された貞観や開元の治においても、地方や辺境での庶民、具体的には農民の暴動は、恐らく全てが程度の差こそあれ反乱として過酷に鎮圧されたものの、その数においては決して少ない数ではなかったろう。民衆から見て例外的に清貧に甘んじたとされる清廉潔白な官僚についてすら清官三代とまで言われた以上、貪官汚吏に至っては我々の想像を絶するスケールの銅臭に塗れた官僚達がいたことは隠れも無い事実である。一方、腐敗が極に達したといわれる清朝においても建国当初から80年間は、けっこう正義が通った時代として認識されている。
翻って中華人民共和国の現状は如何。マスコミによれば、最近広東省の一地方で地方政府の土地収用にからんで武装警官が動員され、戦車や機関銃までが使用され、一説によれば農民が70名余死亡したとの情報があり、事件から4日も遅れて新華社が3名の農民が死亡したこと、当局側が、正しい秩序ある行動をとったにも拘らず、暴発した農民の行動により、当局側にも多数の負傷者が出たこと、土地収用に際して妥当な対価が支払われたにも拘らず、農民が更なる補償を要求し、已む無くとった措置であったこと等を報道した由である。もとより真相は不詳ではあるが、別のマスコミ報道では該当地域に対しては、現在厳しい報道管制と立ち入りを許さぬ警戒網が敷かれているとの情報も散見される。その癖、珍しいことに当局側でも過剰防衛等の疑惑で数名が拘束されたとの情報まで報道されている。数万件に及ぶといわれる農民による強訴ないしデモあるいは暴動が殆ど報道されない実情にてらしても、新華社の今回の報道自体が普段と違うと思わざるを得ない。