「ほたるこい」と「蛍の光」

童謡「ほたるこい」の甘い水

 

ほうほう ほたるこい

あっちの水は にがいぞ

こっちの水は あまいぞ

ほうほう ほたるこい

 「ほたるこい」を作詞・作曲したのは、三上留吉さん(1897-1962、鳥取県)です。小学校の先生でした。野外ソングやゲームソング、県内の民謡や小唄の作曲に情熱を傾けました。あっちの苦い水は、世知辛い世間の水。こっちの甘い水は、仏が施す水のことだとも・・・。ほたるが乱舞する生命的な光は、闇からあこがれ出づる魂の自我像のようです。ほたるこい・・・と呼びかけるのは捕獲するためではなく、はかなく溶けて移ろいゆく命の陽炎を間近で愛でてみたくなるからなのでしょう。「物思へば 沢のも わが身より あくがれ出づる 魂かとぞ見る」(和泉式部)

今様の調べ、蛍の光(原題は「蛍」)

 

 

蛍の光 窓の雪

書(ふみ)読む月日 重ねつつ

いつしか杉の戸を

開けてぞ今朝は 別れゆく

 は蛍の光、冬は窓に射す雪の光で苦学に励む月日を重ねつつ、気がつけば光陰は矢のように過ぎ=杉の戸を開けて、誰もが時と場所と人との別れを迎える朝を迎えます。スコットランド民謡の美しい旋律に、東京師範学校・稲垣千頴(いながき ちかい)さんが今様形式の作詞を当てはめました。原曲の詩とは全く違う内容の学窓ソングです。日本の子ども達に相応しい詞が、創作されたのです。

 「蛍の光、窓の雪」は、中国の故事「蛍雪の功」から採られた言葉です。明かりを灯すお金もないほど貧乏だった晋の時代の車胤(しゃいん)と孫康は、逆境に負けず昼夜を問わず勉学に励んで出世しました。明治文明開化に物心ついた日本人は、取り敢えず清貧を元手にがむしゃらに邁進する他はありませんでした。蛍雪を耐えた鋼のような清き心が、功=天職を成し遂げさせるのです。

 「蛍の光」は時代が希うメンタリティーを、唐土(もろこし)の言葉を借りて日本の情感の中で昇華させました。外来のものを移植する日本人の魂の方法論の一端を、ここに垣間見る事ができます。スコットランド民謡が日本の伝統音階「四七(よな)抜き」(音階のファとシがない)と一致していた事も、日本人の情感を揺する歌として愛唱される資格を有していました。明治14年、日本最初の音楽教科書「小学唱歌集」に収められて普及したのです。

 

 

(速人)

 

 

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