【ノンフィクション】ナンシーのカルテ(4)

【大紀元日本8月23日】ナンシーの症例は実話である。現在、彼女は引き続き治療を続けており、結果がどうなるかは誰も予測することができない。死に設けられた関門を乗り越え、九死に一生を得られるかどうかは、彼女自身が決められる事ではない。彼女が遭遇した様々な困難は、彼女が蓄積してきた過去からの業による結果にみえる。私の理解では、過去の人生や今回の人生で、ナンシーが作り出した業が彼女の命を脅かしており、その苦しみにより彼女は借りを返しているのだろう。医師として、私にできることは、彼女が理解し受け入れられるようにアドバイスすることだけだ。もっと良な心で人に接しなさいと。

よく人から、「なぜガンにかかるのか」と聞かれるが、現代医学から解釈すれば、さまざまな要素が挙げられる。例えば、遺伝、喫煙やアルコールなどの生活習慣、環境汚染、食事、性格などだ。しかし、これだけではがんの根源を説明することができない。がんの根本的な原因は、別の空間に存在する「業」であり、現代のテクノロジーを駆使しても、触れることも見ることもできないものだ。

私は、ナンシーの病気を治療する過程で、これまでに気づかなかった問題点を発見した。それは、多くのがん患者に共通するものだが、つまり、彼女は生活の中でぶつかった様々な気に障るような事柄を、長期にわたって自分の心に留めておくことだ。人は、時として気に障るような言葉を投げかけられたりするものだが、がん患者たちは、それらの言葉を決して忘れず、いつまでもその恨みを抱きつづけているのだ。

ナンシーは、健康に対してかなり気を使っている。彼女が健康のために実行した食事、および運動メニューは1冊の本が書けるほど素晴らしい内容である。彼女は、毎日摂取するカロリー、たんぱく質、ビタミン類の摂取バランス、毎日歩いた距離、毎日の心拍数などを厳密にコントロールしていた。しかし、人間の健康や寿命を決めるものは、それらとは別の次元にあるということを、彼女は理解していなかった。

私はかつて、健康と心の関係や、「・善・」に従って心を修めることの意義などをナンシーに話したことがある。しかし、ある日、彼女は「なぜ真・善・忍を修めれば、病気を治療することができるとはっきり言わなかったのか」と私に不満を漏らした。

私は、「自分に非があるかもしれないとき、自分を探して御覧なさいと私が言ったら、貴方は自分は何も悪くないといったのではないですか?」と答えた。

私は、彼女が堅く閉ざした殻の中に、誰にも触れさせたくない頑固な執着心があることを感じていた。それは、決して薬物治療もレーザー治療も届くことのない、彼女の病の根源だと、私は思った。命を脅かす病気は、実は自分が作り出した業によるものだということを、彼女が知るよしもない。彼女の信じる「常識」が、彼女の目の前にある真実を覆い隠しているのだ。

ナンシーは現在も、最高の医師、薬、治療法を求め続けている。彼女はあちこちの病院へ通うために忙殺されたが、結局何度も失望する結果となった。運命や神を信じなかった彼女は、様々な失敗を重ねた後、徐々に心を開き始めていた。彼女は真剣に、業力と病気の関係、神様の存在を考え始めたのである...
(つづく)

(「新紀元週刊」より転載)

(翻訳・豊山)