【ノンフィクション】ナンシーのカルテ(6)

【大紀元日本9月1日】ナンシーの症例は実話である。ナンシーは今でも治療を続けており、結果は未だ不明である。ナンシーのケースから、病気にかかってそれを治療するプロセスが明らかになってくる。私たちの命と、その運命を決めるものは何だろうか?

通常、ナンシーが受けているような化学療法は、ずっと前に終わっているはずだった。不思議なのは、ナンシーも医師も、この治療過程がいつまで続くのか分かっていないことだった。化学療法は、患者の健康に重大な損害を与える。この療法が、患者の寿命を決めてしまうこともある。誰もこの療法の終わりを決めることができないため、ナンシーはこの次元を超えたところにあるものが寿命を決めているのではないかと信じるようになった。

ナンシーは最近、3回にわたって化学療法を受けた。その6週間で、ちょっとした医療ミスが何回もナンシーの身に起こり、彼女は医者を次々と代えていった。医者を代えるたびに、ナンシーは彼女の治療過程や薬の量などを長々と説明しなければならず、その態度はまるで教授が生徒に教え諭す時のようだった。しかし、それでも彼女に対するミスは続いた。

ナンシーは、岐路に立たされていた。もし彼女が化学療法を止めたら、今までの努力や次々と代えた医師たちが、すべて無駄になってしまう。もしこのまま続ければ、何が起こるかわからない。彼女は、正直に心の悩みを打ち明けた。

「先生、もし貴方が私の立場ならどうします?もちろん、先生が私になることはありえないけど。多分、私の痛みを先生が感じることもないでしょう。先生の体ではないのですから。この猛烈な痛みを決して知ることはないでしょう…」

私は何も言わず、静かに彼女の言葉を聞いていた。

「すべてのガン患者は、私のような痛みを経験するのですか?時に、ガン患者は自分の腫瘍で死ぬのではなく、医療事故で死ぬことがあると聞きました。誤診や間違った治療方法などが患者の死を招くことがあるそうです。一部の患者は、医者に絶望して、諦めてしまったそうです…」

「最近では、多くの医師が学校を卒業したばかりで病院に入ってきます。彼らは多くの理論を教科書から学びますが、臨床経験は少ないのです。彼らの自信過剰ぶりと、患者の気持ちを無視する態度、そして金銭欲などが彼らの魂を汚し、無意識に殺人を犯してしまうこともあるでしょう。私は貴方を信じます。なぜなら、貴方は道徳心のある人だと思いますから。私は、他のどの医師からもなどの精神に関する話を聞いたことがありません。最初は、信じていなかったけれども、今ではそれが真実で大切なことだと分かります」

「でも、なぜ私は真、善、忍、を信じているのに、いまだこんなにトラブルが多いのですか?貴方は健康そうで、うらやましいわ」

私は笑いながら、「ナンシー、貴方は真、善、忍を信じていますが、それを実行していますか?その原則が良いと分かっていても、それを本当に心に受け入れているでしょうか?もしそれらを本当に信じて実行しているならば、なぜ何度も医師を代えたりしたのでしょうか?」と言った。

ナンシーは一瞬考えてから、「もしこの悪夢が終わったら、私は必ず心の修練をします。先生、私にもチャンスがあるかしら?」と聞いた。

もちろん、と私は頷いた。

(全文完)

(翻訳・田中)

原文:http://epochtimes.com/gb/7/8/29/n1817688.htm