世界の水戦略、日本はシンガポールに学べ

【大紀元日本11月29日】非営利特定法人「日本フォーラム」は27日午前、都内永田町の都市センターホテルで国際フォーラムを開き、国内の有識者として元国連テクニカルアドバイザーで国際水ジャーナリストの吉村和就氏(グローバルウォータージャパン代表)を招き、過去から現在そして未来に渡るシンガポールと世界の水戦略をテーマに講演と活発な討論が行われた。

吉村氏は、先日韓国環境省の招きで渡韓し講演を行った際に聴衆400人余が詰め掛け、韓国が官民連携で国策として水ビジネスに本腰を入れ始めていることを指摘、あわせて韓国サムスンの携帯電話が米国でシェア第一に輝いている陰で、その部品の95%は日本製であり、日本は良い部品を作っているにもかかわらず、それがビジネスとして成立していないことが日本経済低迷の原因だと分析した。

同氏によると、RO膜(海水脱塩分膜)の日本製品シェアは世界の約70%、さらにMFU膜(精密ろか膜)の日本製品シェアは約40%あるものの、政府の国策としての援助がないためにビジネスとして出遅れて成立していないと指摘、21世紀は水の時代であり、アラブの王様がかつて言った「水の一滴は、血の一滴」が世界の常識になりつつあると予測した。

過去50年間で、世界の人口は2倍になり、水の需要はそれにも増して4倍になり、今後は2025年に人口は80億人に、さらに水の需要は1.5倍になると予測、その時点で最も負荷のかかるのがアジア地域で、人口の爆発と経済発展、さらには生活の衛生化(風呂や朝シャン)などで水が不足するだけでなく、さらには世界的傾向として、水質の汚濁、地下水の減少、温暖化によるゲリラ雷雨などで危機的な状況が訪れるという。

こうした世界的な水不足の傾向を受け、世界の水ビジネスは年6%の成長をしており、ベストシナリオで12%、海水の淡水化ビジネスは年14%、水のリサイクルは米国内で8.8%と好調だ。世界各国は、将来的に水のリサイクルを視野に入れており、現在20%のリサイクル率を30%にしたい意向だ。例として、オーストラリアは2015年までにリサイクル率を30%に、中国は北京などの北方の都市で20-25%、福建省など南方の都市で15%にまで高めたい方向だ。

現在、世界の水メジャーは、フランスのヴェオリア社、スエズ社、英国のテムズ社が有名で、それぞれ「水商売」で1兆円以上規模の事業を行っている。新興のシンガポールは、ケペル社とハイ=プラックス社が台頭しており、これは「日本に学べ」と叫び続け、政権を31年間担当したリー・クウァン・ユー元首相の経済政策の結果だ。同国は、積極的な外資の導入と外国人技術者の招聘で、現在は国際競争力が世界第1位となっており、アジア地域で第6位、世界では第22位にまで競争力が落ち込んだ日本は、既にシンガポールについて学ぶ側になっている。

日本国内の水業者は、外国にプラントを建設すると一目散に帰国するが、外国の水メジャーは上下水道の維持管理で「日銭」を稼ぐ企業体だ。かつて国内の上下水道整備に充当された予算は6兆円規模であったが、現在では2兆5千億円にまで縮小しており、業者らは必然的に外国でのビジネスに触手を伸ばそうとしているが、それには外国の企業に比して能力的な面で種々の問題点があるという。

日本企業は、英語を使った情報収集能力、人的交流、プラントの運転管理、先端技術では外国企業に遅れをとらないものの、カントリーリスクの管理、契約書の作成、政府の後押し、技術開発力、日本発の国際基準、英文での情報発信能力には欠ける面があるため、海外でのビジネス展開に支障をきたしている。隣国中国では、ヒマラヤの水源が将来的に中国側とメコン川流域諸国とで火種になることが予測され、世界の水源が注目されつつある。日本国内の産学連携はもとより、「官」「民」「NPO」のネットワークがどこまで明確な将来的ビジョンと戦略をもって水ビジネスを展開できるかが鍵になりそうだ。

(記者=青嵐)

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