グーグルの中国市場撤退、外資系の「ニューリアリズム」反映

【大紀元日本3月28日】今月22日、中国政権が要請する検閲から自らを解き放ったグーグル社。同社の動きは、西洋の資本家と北京の権威主義政権との関係が、転換期に来ている象徴と取られているようだ。

グーグル社の中国の権威主義に真っ向から対抗するような決断に対して、中国でのネット検閲を担う機関の一つである国務院新聞弁公室は、グーグル社の動きを「間違った行動」と強く批判するが、中国と西側との経済関係に影響しないと強調する。中国外務省のスポークスマン秦剛(チン・ガン)氏は、「政治問題として取り上げるものがいるなら別だが、特に米中関係に影響する問題ではない。わざわざ取り上げない限り、国際社会での中国のイメージに影響を与えるものではない」と、孤立したケースとして扱っている。

しかし、中国で事業を展開する外資系にとって、グーグル社の動きは、中国政府への対応における一つの大きなうねりを示すものだ。

外資系企業が直面する「ニューリアリズム」

グーグル社が22日検閲なしの自社サーバーを香港に移動した行動は、北京政権がいつでも自社サービスをブロックすることを覚悟した上での決定。閉鎖されても自ら自社サイトを検閲するよりましだとのグーグルの立場。

「グーグル事件は、今後の変化を触媒することになるだろう。実際、現在変化が起こっていることの裏づけでもある。中国市場の規模は大きく、利益を享受したいと願う外資系企業が中国政権に対して悪いことをいうのは実にまれだ。しかし、実際に自己の良心に忠実な企業が出たということは、転換期であることの証拠」と北京を拠点とする経済専門の企業ドラゴノミクス社の代表取締役アーサー・クローバー(Arthur Kroeber)氏は、米紙「ワシントンポスト」(24日付)に対して語る。

過去30年、欧米の企業は北京政権の最も親密な友だった。90年代、天安門虐殺事件後、米国会が中国の最恵国待遇を取り消そうとした際、米商工会議所やほかの商業グループがワシントンに飛び立ち、米国会の行動を止めるように圧力をかけた。

しかし最近、欧米企業から中国での事業運営状況について多くの不安の声が上がっている。「ワシントンポスト」によると、北京政権に親しかった中国の米商工会議所は、今月22日、203名の会員を対象とした中国での事業展開における確信度調査で、これまで4年間の調査における最低値が出たと報告している。

昨年12月、ワシントンの米商工会議所は、33におよぶ世界の各業界の協会が連名で、「外資系企業が中国市場で事業を展開するために、知的所有権と商標を中国に明け渡す」ことを強要する中国の計画を批判する手紙を作成するという、前代未聞の行動に出た。

一方、中国EU商工会議所は過去数年にわたり、中国での事業環境は悪化しているという複数の報告書を発行。その中には、中国の「経済ナショナリズム」を摘発するものや、中国の経済改革は事実上、中断されてしまったという主旨の報告書が含まれている。

同会議所のヨルグ・ヴトケ(Joerg Wuttke)会長は、「ワシントンポスト」に対して、「2009年、中国は世界で成長する二つの市場の一つだったが、その門戸は開かれるどころか、狭められている。政府は市場開放を口にはするが、国内での実践はその反対で悪化する一方」と語る。

10年以上にわたり、中国における欧米事業の危機の動向を追ってきたジョー・スタッドウェル(Joe Studwell)氏は、欧米企業の中国に対する態度の変化は、「ニューリアリズム」の一環と解説する。多くのビジネスマンが見込んでいたこととは逆に、中国は市場を開発することはなく、通貨を切り上げることもないというリアリティーが、浮き彫りにされてきたわけだ。

グーグルの後に続く企業

実際、グーグル社の行動に続き、24日米国会で開かれた「人権と貿易の関係」の公聴会で、米2大ドメイン登録ビジネスの企業、ゴーダディー・ドットコムとネットワーク・ソリューションズーダディーも、中国での新規登録提供をすでに停止したと発表した。北京政権がインターネット監視のため登録者の個人情報をさらに要求する規定への反発だと2社は表明している。

公聴会で、米国会議員デービッド・ウー氏は2社の声明を支持、北京当局はインターネット検閲を停止しなければ、もっと多くの企業がグーグルやゴーダディーの後に続き、中国のビジネスをクロースすると指摘した。

個人パソコン製造世界第2大手のデル社も、中国でのビジネスをインドに移動する考えを示している。インドの首相との最近の会談で、同社CEOのマイケル・デル氏が、法律制度がより安全な企業投資環境を探している最中で、中国にある250億米ドルの設備やパーツをインドに移す考えを打ち出した。

ドイツ誌「経済週刊」の報道によると、グーグルの行動は、中国にいるドイツ系企業にも影響を与えている。医療設備関係のドイツ企業は、生産設計図とソフトを中国当局に渡すよう強要された場合、中国からの撤退を考えると示しているという。

中国市場の規模に惑わされたこれらの企業は、中国共産党政権に忠誠を示し、すべてを権威主義政権に捧げるか、それとも中国抜きのグローバル市場で事業を展開していくか、進退を見極める時期が来ているようだ。

(編集・鶴田)
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