孝行息子と魚の物語

【大紀元日本5月25日】 北米の中華料理店では、シタビラメ「竜俐(long le)」を食材にした料理が華人たちの間で人気がある。魚肉は舌の上で溶けるように柔らかいが、なぜか片方しか肉がついていない。こげ茶色の一面に肉が付いているが、もう片方の白色の面には肉がほとんど付いていないのだ。なぜ片方しか肉が付いていないのだろうか? それには、ある伝説がある。

昔、ある若者が目の不自由な母親と一緒に暮らしていた。体の弱い母親はいつも病気がちで、長年にわたってほとんど寝たきりの生活だった。ある年の冬、母親は何日もの間、食事をとらなかった。貧しい家計を支えるのに何の役にも立つことが出来ないと思い悩んでいた母親は、息子にとって自分はお荷物にほかにならないと思い、自ら食を断って死んでしまおうと決心したのだった。

それとは知らず、母親のことをとても心配した息子は、母親に食べたいものがあれば教えてくれるように哀願した。母親は、川の水が凍る冬には絶対に手に入らないだろうと思い、「魚が食べたい」と答えた。自分の命を救おうとしている息子を断念させようとしたのだ。

息子は、母親が魚を食べてくれたらきっと命が助かると思い、喜び勇んで川へ走って行った。しかし、氷に覆われた川の光景を見て、おもわず思い悩んだ。どうやって魚をとればよいのかと。

息子は、天と川の神様に向かって、氷が張っている川から魚が捕れるようにひたすら祈った。それから着ていた上着を開き、胸を氷の表面に付着させて、自らの体温で川の表面を溶かそうとした。彼の誠の真心と敬虔な祈りが神様に届いたのか、氷と雪は急速に溶け始め、しばらくすると、元気の良い一匹の鮮魚が氷の表面から跳び上がって来た。

今まで殺生したことのない善良な息子は、魚を抱いてこのようにささやいた。「お前の命を奪おうとは思わないが、母親を助けるために一面の肉だけをもらえないだろうか。」言い終わると、魚の側面から内臓を傷つけないように片面の肉だけを切り取り、またその魚を水の中に戻してやった。その後、この魚は「孝行の魚」と言われ、今では海外の華人たちの間で「竜俐」と呼ばれるようになったという。

その夜、息子は母親のために魚の肉を使った新鮮なスープをこしらえた。奇跡的なことに、母親はその魚のスープを飲んでから、体が日に日に回復し、目も再び見えるようになったという。

真に純粋で善の心を持ち、良い行いをすれば、最終的には良い結果が得られるということを教えている。

--正見ネットより転載

(翻訳編集・柳小明)