体に浸透する チェコ・ボヘミア地方の「飲む」温泉

【大紀元日本6月12日】14世紀の半ば頃の話- 神聖ローマ帝国の皇帝カレル4世が狩猟に出かけ、狙いを外してしまった鹿を追いかけたところ、プラハの西南方の森林の中で湧き出る天然の温泉を発見した。そこが今日、世界的に温泉の街として知られるカルロヴィ・ヴァリ(Karlovy Vary)である。名前は「カレルの温泉」という意味だ。

カルロヴィ・ヴァリはプラハから130キロ離れたところに位置する、森林に囲まれた美しい渓谷にある町だ。温泉を発見したカレル4世は大喜びして自分の名前をその温泉に命名したという。

カルロヴィ・ヴァリの発展は18世紀から19世紀にピークに達した。温泉療法は当時から信じられていたため、欧州各国の有名人もここを訪れて遊泳したりしたという。例えばオーストリアのマリア・テレサ女皇、ロシアのピョートル大帝、文豪のトルストイやゲーテ、音楽家のベートーベン、モーツァルトなど。発見から600年以上の歴史を持つカルロヴィ・ヴァリは、今なおたくさんの観光客が訪れる世界的な温泉名所となっている。

飲む温泉水 飲泉施設「コロナーダ」

日本では、温泉はどっぷりとお湯につかって楽しむのが一般的だが、チェコではコップを用意し、体をぬらさずに温泉を「飲んで」楽しむ。この飲泉施設は「コロナーダ」と呼ばれ、現在5つ存在するコロナーダは1871年から1881年まで10年かけて築き上げられた歴史的な建造物でもあり、観光スポットにもなっている。温泉ではそれぞれ特殊な治療効果を体験できるため、医療専門家のアドバイスに従って飲泉するとより効果を得られるという。

カルロヴィ・ヴァリには100カ所以上の温泉があり、うち現在12にコロナーダが作られた。温度はそれぞれ違い、治療効果も数十種類ある。19世紀のとき、治療・療養にやってきた観光客が楽に温泉の水を取れるようにさせるために飲泉施設「コロナーダ」をつくり、温泉水の湧き出る蛇口を作り、人々がゆったり散歩しながら、ひとつずつ味わうことができるようにさせた。現在も5つのコロナーダで飲泉できる。

コロナーダは主にTeplaの右岸、北から南へ向けて、サドヴァ・コロナーダ(Sadova Kolonada)、ムリンスカ・コロナーダ(Mlynska Kolonada)、トルジニー・コロナーダ(Trzni Kolonada)、およびブジーデルニー・コロナーダ(Vridelni Kolonada)などがある。

サドヴァ・コロナーダ

サドヴァ・コロナーダ(ネット写真)

サドヴァ・コロナーダはドヴォジャーク公園に隣接して建てている。1881年に出来上がったこの回廊は薄いブルーの円形のドームが印象的で美しく、非常に細い彫りの装飾図案が非常に優雅である。47℃の温泉蛇口があり、現地で直接飲める12個の泉源のひとつである。

サドヴァ・コロナーダの彫刻された装飾図案(ネット写真)

ムリンスカ・コロナーダ温泉回廊 

ムリンスカ・コロナーダ温泉回廊は、他とまったく異なる造りとなっている。街の中心に位置しており、124本の石柱が支える屋根は12の月(12ヶ月)を現した彫刻が特徴的で、迫力がある。1871年から1888年にかけて建設されており、プラハ国家劇場のデザイナー、ジョゼフ・ディック(Josef Zitek)が設計、1893年の拡張時に、今日のルネッサンス様式の優雅な建物になった。132メートルの長さのある回廊には温泉の湧き出る蛇口が5カ所ある。

ムリンスカ・コロナーダ(ネット写真)

トルジニー・コロナーダ 

トルジニー・コロナーダはスイススタイルの建物で、白いレースのような装飾が美しい。1993年に修復完了。南西の端にある源泉にはカレル4世の名がつけられており、王が温泉を発見する様子を描いた木のレリーフが掲げられている。カレル4世も治療のために利用したといわれている。

トルジニー・コロナーダ(ネット写真)

ブジーデルニー・コロナーダ 

ブジーデルニー・コロナーダは上述の3つのコロナーダと違って、近代的な雰囲気が満ちている。最も観光客の歓迎を受けるコロナーダだ。中には、カルロヴィ・ヴァリで温度が一番高く、一番高く吹き上がる間欠泉がある。このコロナーダの中には、また記念品を販売するお店とサービスセンターがある。

ブジーデルニー・コロナーダ(ネット写真)

(彭欣喬著『布拉格自助超簡単』華成出版より抜粋)

(翻訳編集・李英淑)